モンゴル人力士の厳しい縦社会
また、事件の発端となったモンゴル人力士による会合にみられるように、モンゴル人力士の絆は固い。横のつながりだけではなく、縦の関係もはっきりしている。
モンゴル人力士の間では、番付に関わらず、年上の力士を敬う習性がある。かつて旭鷲山とともに来日した旭天山という力士がいた。
来日した者の中で年長者だった旭天山は一番の有望株で、将来の関取は間違いないと言われていた。だが、太ることの出来ない体質だったため、最高位は三段目だった。
旭鷲山や旭天鵬らが来日してすぐに部屋を脱走し、モンゴル大使館に駆け込むという事件が起こったが、唯一、部屋にとどまったのが旭天山だった。関取になることは出来なかったが、長くモンゴル人力士のリーダー的存在で、モンゴル人力士の会合を始めた力士でもある。
朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜といった歴代モンゴル人横綱は常に旭天山への敬意を忘れなかった。
当時、自身より年長で横綱である日馬富士に、どのような状況であれ貴ノ岩がモノを言える立場になかっただろう。
元横綱日馬富士による貴ノ岩への傷害事件は、貴乃花親方の角界引退の引き金となり、裁判の行方に世間の注目が集まったが、横綱が平幕をあっけなく寄り切る幕引きとなった。
(J-CASTニュース編集部 木村直樹)