布やビーズなどを使って手作りで制作する「ハンドメイド」のアクセサリーが注目を集めている。最近では、情報バラエティー番組「ヒルナンデス」(日本テレビ系)で取り上げられたが、ハンドメイド制作の実態が正確に伝わらないのではないかとして、様々な声が出ることになった。
というのも、番組では「稼げる」ものとしてハンドメイドを紹介。「材料費200円に対し、販売価格は1300円」などとコストの低さが強調されており、実際のハンドメイド作家から「初期投資、練習、作業工賃、送料まで考えたら材料費だけでできる訳ないじゃん」などと疑問の声があがった。J-CASTニュースはハンドメイド作家に話を聞き、実態を探った。
「材料費わずか200円で作れる」?
2018年10月17日放送の「ヒルナンデス」では、「日々1円単位の節約に命をかける『ドケチ隊員』が、副業で稼ぎまくるカリスマ主婦に弟子入りする」というコーナーで、芸能人4人がハンドメイドに挑戦。ハンドメイド作家の指導のもと、ピアスやイヤリング、ブローチといった装飾小物を制作し、フリーマーケットサイトに出品して一定期間内に買い手がつくかまで見守った。4人が2品ずつの合計8品が制作・販売され、7品が売れる結果となった。
強調されたのは、「コストの低さ」や「手軽さ」だ。テロップやナレーションでは、「初心者でも高級感を出せる! 30分で簡単に作れるアクセサリー」「材料費わずか200円で作れる、つまみ細工アクセサリー」といったフレーズが用いられた。
ハンドメイドの完成品を映しながら「材料費」と「販売価格」を比較し、「材料費180円・販売1180円」「材料費200円・販売1300円」「材料費60円・販売800円」などと紹介。作品は、成型の原料や接着剤となる「レジン」を使った物と、伝統工芸「つまみ細工」を活用した物の2種類で、作業時間は前者が30分、後者が1時間だった。
このように紹介されたハンドメイドだが、実態はどうなのだろうか。「販売価格に対する材料費の安さ」や「作業時間の短さ」が強調されていたものの、ハンドメイド作家というツイッターユーザーからは、
「ハンドメイドの安さばっかり強調しないでくれたら見てても気持ちいいのに。初期投資、練習、作業工賃、送料まで考えたら材料費だけでできる訳ないじゃん」
「人件費は勿論、機械や道具類の初期投資、発送時の封筒や緩衝材などの梱包費、材料費は大量購入したものを割った金額だと思うし、売れる水準に達するまでの材料費やテキスト代、資材調達の為の交通費を割ったらそんな金額じゃできないよ...」
「自分も趣味で作っていますがハンドメイドは時間と労働力や材料代もこだわれば掛かるのになんだかハンドメイド作ってる人がぼったくりしてるみたい」
といった投稿が相次ぐこととなった。
「実際は多くの手間や費用をかけた上で商品ができています」
ハンドメイドの販売を本格的に始めて1年、制作自体は学生時代からブランクを挟みながら15年間続けている桜井芙弓さんはツイッターで18日、「ハンドメイド、楽に稼げるだなんて、思っちゃいけませんよ...」として、制作から販売までの工程を図解。制作に必要な定規やカッター、ちりめん複数色など、まず必要な材料・工具を手芸店でそろえるのに約6000円かかること、制作技術は書籍や教室で学ぶ必要があること、デザインを描き上げるにも時間を要することなど、「材料費」や「作業時間」だけでは測れないハンドメイドの手間を解説している。
桜井さんはJ-CASTニュースの19日の取材に応じ、「200円分の材料だけポンと渡されてもいきなり30分で作れません。技術を学び、多くの道具を買いそろえないといけません」と話す。たとえば「レジン」を使う場合、「丁寧につくるなら、成型する際、はじめは内側に気泡が入り込んで出来栄えが悪くなることが多いです。ある程度の練習が必要です」といい、桜井さんの場合は5~6作品目から綺麗な成型ができるようになったとのことだった。
また、
「心配なのは、これからハンドメイドを作ろうという方々より、買う側の方々が、『原価に対して販売価格が高すぎるのではないか』と認識するかもしれないことです。実際は多くの手間や費用をかけた上で商品ができています。しかし、そうした過程が考慮されず、たとえば1300円と値付けしている商品でも材料費の200円くらいで売ってほしいという話が出てしまいかねません」
と危惧している。
実際に放送直後、インターネット上では、
「ボリすぎで草」
「こういうの見ると高い金出して買うの バカらしくなるな」
「ヒルナンデスでつまみ細工やってるんだけど、がっぽり稼ぎたいとか言ってる時点でぼったくりじゃねぇかって思う」
と価格について不満の声もあがっていた。ただ桜井さんは、価格設定について「安すぎると、かけた時間・費用に比べてリターンが少なく、くじけて続けられなくなるのではないでしょうか。続けていくためにも正当な報酬は必要と思います」と話している。
扱いが要注意の素材も
関東在住でハンドメイド歴4年という別の女性は、J-CASTニュースの取材に、「作家さん達は材料や道具を自分で用意してデザインを考えて作って、サイトを作り、作品の写真を撮り、説明を考え、売れたら梱包し、宛名を書いて送っています」と、完成してから販売するまでにかかる手間の多さを明かした。こうした作業についても「ハンドメイドを販売する際には重要だと思います。写真の見栄えや説明文の丁寧さに作家さんの人となりが見えるからです。そこまでやってハンドメイド販売が成り立ちます」としている。
取扱いに注意を要するものもある。この女性は、番組でも紹介されたレジンを使用したアクセサリーを主に作っており、
「レジンは素手で触ったり匂いを嗅いだりすると、アレルギーを起こしてしまう可能性があります」
と話す。作業する部屋は換気をし、手袋・マスクを着用した方がいいとして、「気軽に始めたのにアレルギーのせいで今後一切レジン作品が作れないとなったらとても残念です」と呼びかけている。
一方、番組を見たネットユーザーから、材料費と販売価格を比較して「ぼったくり」などといった声が出ていることについては、
「値段を決めるのは作家さんです。その値段で納得出来なければ買わなければ良いと思います。その作家さんの客層に合っていないだけの事です。作品は作家さん、購入者さんの物です。買わない人がとやかく言う事ではないです」
と見解を述べていた。