自社を批判するブログ記事をグーグルの検索結果から除外させ、批判を招いたとして、プログラミングサービス「侍エンジニア塾」を運営する「侍」(東京都目黒区)は2018年10月25日、公式サイトで謝罪した。
同社をめぐっては、新規入会者を募るページで事実と異なる表記をしていたため、インターネット上で指摘が相次いでいた。ブログ記事ではこの点を批判していた。
有利誤認を招く勧誘
「侍エンジニア塾さんのこの表示方法って、法律的にアウトなんじゃないんでしょうか...?」
ツイッターユーザーが10月12日、侍エンジニア塾の入会案内ページのソースコードの写真とともに疑義を呈した。
ページに記載されている入会案内では、10月10日までに無料体験レッスンを受けた先着20人に「今なら通常10万円の入塾金0円」とある。しかしソースコードを確認すると、現在から1週間後の日付が常に表示されるよう設定されていた。つまり、「今なら」ではなく「いつでも」入会金は無料だった。
「告発」ツイートは広く拡散され、「自己投資で学ぼうとしている人を騙すようなやり方はNGだと思います」といった声が殺到。いわゆる炎上状態となり、侍社は10月15日に「弊社サイト内のキャンペーン表示において、不適切な記載があった」として公式サイトで謝罪した。
批判記事に「暗々裏」にクレーム
炎上は沈静化するかにみえたが、侍社の「隠蔽工作」とも取れる動きが明るみとなり、さらに燃え広がった。
侍社の元従業員の男性が一連の炎上騒動を取り上げたブログ記事を公開したところ、同社が「暗々裏」にクレームをつけていたためだ。
同社は20日、米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき、ブログ記事は「著作権侵害」だとして、グーグルに削除申請をしていた。侍社が制作した画像や自社サイト内の文章などが「無断引用」されたためとしている。編集部で確認したところ、24日までには検索結果から除外されていた。
この件を先の男性がツイッターで報告したところ、「DMCAの悪用」「消そうとすればするほど燃えるのに...」と、またも批判が集中。男性はJ-CASTニュースの取材に「塾生のことを考えて誠実に対応して欲しいなと思っております」と話した。
削除要請は正当?弁護士の見解
侍社の削除要請は、正当といえるのか。
「この主張が正当かどうかは、同ブログの上記引用が著作権法上許されている『引用』に該当するかどうかによります」
こう説明するのは、弁護士法人・響の西川研一代表弁護士だ。
西川弁護士によれば、争点は「同社指摘の引用が、目的上正当な範囲内であるかどうか、具体的には引用するだけの必然性の有無や、引用する分量が必要最小限度か否か」だという。
「ただ、ブログ中で指摘されている問題点を説得的に説明するためには、指摘されている引用部分は根拠として必要であるように読めるので、必然性は存し、また、引用画像がおそらく一体のものであることや、お知らせ文が意図的な引用になることを防ぐことを考慮すると、必要最小限度であると思われます。したがって、著作権法上の『引用』として認められ、同社の主張には正当性がないと判断される可能性が高いと思いますが、最終的にはDMCAや国内で争われた場合には日本の裁判所の判断にゆだねられることになります」
ただし、DMCAについては「膨大な申請を処理している関係上、審査が甘くなっている」との指摘もあるという。
侍社、再度謝罪
侍社は25日、「DMCA本来の目的から逸脱した利用を行ってしまった」として管理部長の名義で公式サイトで謝罪。申請内容は「内部での対応伝達に不備があり、本来意図するものとは異なる申請内容も含まれておりました」とも釈明した。
グーグルにはすでに申請の取り消しを依頼し、現在はブログ記事が検索結果に表示されるようになっているという。同社は「今後は全社を挙げて、改善策及び再発防止策等に努めてまいります」としている。