韓国の外交官の中では、日本語に堪能で日本事情に精通した「ジャパンスクール」は、北米担当の「ワシントンスクール」と並んでエリートコースだと考えられてきたが、その地位も怪しいようだ。在京韓国大使館から異動する外交官の後任を募ったが、希望者が「ゼロ」だったというのだ。
韓国にとっての日本の重要度が相対的に低下したことで「ジャパンスクール」が軽視されるようになったこと以外にも、懸案が相次ぐ日韓関係をめぐる様々な要因があるようだ。
国内世論に押され幹部が「不利益」
この問題は、2019年初頭に駐日韓国大使館から書記官級外交官3人が帰国するのにともなって後任を募集したが、応募がゼロで、再募集を余儀なくされたというもの。中央日報が「東京の外交消息筋」の話として10月22日に初めて報じ、他の韓国メディアも相次いで報じた。
中央日報によると、00年ごろから外交官が中国を好んで選ぶようになり、13年の時点で
「外交官の勤務選好度が『北米>日本>中国』から『北米>中国>日本』に変わったのはすでに昔のことだ」
と報じられている。それから5年が経過し、さらにその傾向が加速した可能性がある。
これ以外に同紙が指摘している背景が、日韓関係に対する韓国側の政権の態度の変化だ。15年12月の慰安婦をめぐる日韓合意や16年11月に日韓が署名した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、日韓の外交当局の努力の末に結ばれたが、韓国世論からは強い批判を浴びた。これらの合意は朴槿恵(パク・クネ)前政権で結ばれ、その後の文在寅(ムン・ジェイン)政権は慰安婦合意に否定的だ。合意に携わった幹部が「相次いで人事上の不利益」を受けたとも指摘されている。
徴用工訴訟問題、「和解・癒やし財団」解散問題...
さらに、元徴用工が日本企業を相手取って起こした訴訟の最高裁判決が9月30日に迫っているのに続いて、慰安婦合意に基づいて韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」の解散に向けた動きが本格化するなど、今後も「地雷」は多数だ。こういった懸案を抱える駐日大使館の環境を「労多くして功少なし」だとしてリスクを嫌った可能性もある。
聯合ニュースによると、別の事情もあるようだ。韓国外務省では、駐日大使館を最重要の「A」ランクに位置付けているが、仮にAランクの在外公館を志望して選考に落ちると、CランクやDランクの在外公館に配属されるという。リスクを取ってAランクを志望するよりも、最初からBランクを志望する外交官が増えている、という見立てだ。
どういった理由であっても、日本勤務を志望する外交官が減るということは、日韓のパイプが細るということでもある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)