サントリーグループで飲料・食品部門を担うサントリー食品インターナショナル(サントリーBF=英語社名「Suntory Beverage & Food Limited」の略)の株価が冴えない。
2018年10月中旬には2日続けて年初来安値を更新し、一時4240円まで下げた。その後やや持ち直しているとはいえ、本業の缶コーヒーや特定保健用食品(トクホ)が苦戦する中で4月につけた年初来高値5490円は遥か遠く、低迷は長引くとの見方もある。
コンビニコーヒーの普及も要因に
10月15日には一時、前週末終値比170円(3.8%)安の4290円まで下げ、年初来安値を更新した。その引き金となったのは、前週末に発行されたJPモルガン証券のリポートだった。3段階の投資判断で最上位の「オーバーウエート」から中位の「ニュートラル」に格下げしたうえ、目標株価を5800円から4500円に大幅に引き下げたのだった。2018年12月期のサントリーBF自身の純利益予想は前期比2.4%増だが、JPモルガンは2019年12月期まで2期連続減益とした。翌16日も一時4240円まで下げて年初来安値をさらに更新した。
主力の国内で採算性の高い缶コーヒーやトクホの「特茶」の販売にブレーキがかかっていることが主な要因だ。缶コーヒーの流通経路は定価販売の自動販売機が多いことなどから採算性が高い。かつて「BOSS(ボス)」といえば、ユニークなCMや「ボスジャン」などのキャンペーンで肉体労働系男性のハートをつかみ、自販機に向かわせたものだった。しかし、今やどのコンビニでも「いれたて」のおいしいコーヒーが100円程度で買えることをみんな知っており、自販機の立場は弱まった。
しかも、サントリーBFは2017年4月、缶より採算性が低いペットボトル入りコーヒー「クラフトボス」を発売した。もちろんヒット商品に育ったことは成功だし、缶コーヒーを飲まない若者を取り込んだ面はあるとされるが、社内競合によって缶から需要を移してしまった面も否定できない。
「天然水」など好材料も
また、トクホの販売本数が減っている。一度習慣がつけば続けて買ってもらえるものだが、日々新たな健康食品が世に出る国内で定着するのはなかなか厳しいようだ。サントリーBFは8月6日に発表した2018年6月中間連結決算の短信で「『特茶』を中心にマーケティング活動に注力したものの前年同期を下回りました」と認めた。
ここで、2018年6月中間連結決算を改めて確認しておこう。売上高は前年同期比3.9%増の6138億円、営業利益は3.5%増の563億円、純利益は20.1%増の413億円だった。一見さほど悪くないようだが、全売上高の半分を超える国内事業は売上高が2.0%増の3338億円でセグメント利益は23.7%減の189億円に落ち込んだ。「サントリー天然水」など伸びたものもあるが、缶コーヒーやトクホの苦戦が響いたうえ、物流費の高騰なども利益を圧迫したようだ。ベトナムなどアジアで飲料が伸びて全体として何とか営業増益になった。また、アジア事業で食品子会社株式の100億円程度の売却益があったことが純利益を押し上げた。
この中間決算などを受けてこの間、JPモルガン以外にも野村証券や大和証券など各社が目標株価を引き下げ、それが株価低迷につながってもいる。SMBC日興証券は9月7日付リポートで目標株価を4660円から4000円に下げるとともに、3段階の投資評価を真ん中の2(中立)から最下位の3(弱気)に格下げした。理由として「国内外ともに大手との競争激化で収益面の悪材料が増える状況」を挙げた。「トップライン(売上高)が伸びても利益が伸び難い状況が続こう」(同証券)との見方が広がる中、株価低迷を脱するのは容易ではなさそうだ。