「政権」として安保廃棄、自衛隊解消はやらない
―― 仮に安倍政権が倒れたとすれば、その後成立する政権では共産党がその一角を占める可能性が高いです。共産党は自衛隊は違憲だとの立場ですが、政権ではどのように向き合いますか。
志位:この政権は、日米安保条約の廃棄、ましてや自衛隊の解消をめざすというような政権ではありません。一番の中心的な課題になってくるのが、この共闘の出発点だった憲法違反の安保法制=戦争法の廃止、そして14年の集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回です。これをきちっとやって、日本の政治に民主主義、立憲主義を取り戻す。政権としては自衛隊を容認しますが、それは14年の閣議決定、15年の安保法制の前の自衛隊ということになります。
―― 共産党としては違憲でも、「政権」としては容認する...?
志位:共産党としては自衛隊は違憲だと考えています。先々の展望としては、国民の大多数が、日本を取り巻く情勢が平和的に成熟して、もう自衛隊なしでも大丈夫だという合意が成熟すれば、9条の完全実施に進むという展望を持っています。しかし、この政権では、そういう課題はもちろんやらない、ということになります。
当面の野党連合政権としては自衛隊を容認するし、政府の憲法判断としては合憲という立場をとる。党の立場と違いが出てくるかたちですが、一定の期間、どうしてもそういう期間は続きます。
―― 天皇制についてはいかがですか。
志位:私たちは現行憲法の全条項をしっかり守るという立場で、天皇制についてもそうです。天皇の制度にかかわる憲法の規定で一番大事なのは、第4条の「国政に関する権能を有しない」という規定です。私たちは、天皇の制度とはかなり長期にわたって共存していく、そのさい憲法のこの規定が一番大事なところだと考えています。
先々の問題として、私たちは天皇の制度を人間の平等や民主主義といった観点からすれば問題のある制度だと考えていますし、民主共和制を実現すべきだという立場を取っています。ただ、天皇の制度は憲法上の制度ですから、この存廃は、国民の総意をもって決めるべきものであって、国民が判断していく問題だということも明確にしています。いずれにせよ、私たちが当面めざしている野党連合政権では、天皇の制度の問題は、憲法の規定を厳格に守るということにつきます。
今の問題として重大なのは、安倍政権が天皇の不当な政治利用をずいぶんやっていることです。この間の問題でとくに許せないのは、4月28日を「主権回復の日」と称して式典を行ったことです。この日は沖縄を切り離し、日本は安保条約を結んで米国の従属下に置かれた日です。これを主権回復の日だと言って天皇を呼んで、「天皇陛下万歳」とやる。最悪の政治利用です。こういうことを止めさせる、ということはきちんとしなければなりません。