台湾東部で脱線・横転事故を起こした電車に並び、「日本製」が現地で波紋を広げている。KYBによる検査データの改ざん問題だ。KYBの免震・制振ダンパーは台湾にも輸出されていたためだ。
KYB製品の採用をうたって宣伝していたタワーマンションも多く、台湾当局も実態調査に乗り出した。
制振装置と建物自体の安全性は「全く無関係」??
台湾への輸出はKYB子会社のカヤバシステムマシナリーが2018年10月19日に開いた記者会見で明らかにした。これを受け、台湾メディアでも連日のように改ざん問題が報じられている。
「経済日報」は、10月23日、「元利和平大苑」(台北市)「富邦天空樹」(台中市)といったタワーマンションにKYB製品が採用されていたと報じている。特に2016年に完成した「元利和平大苑」は、地下7階、38階建てという大規模なものだ。場所は台北市の中心部で、完成時には最上階のバーから台北101、台北駅前にある新光三越、松山空港を離着陸する飛行機が眺められる、といった触れ込みで話題になった。
それだけに影響も大きいはずだが、「経済日報」によると、建築業者は、制振装置と建物自体の安全性は「全く無関係」で、地震が来た時に住居の快適度が落ちるだけだ、などと苦しい説明に終始しているという。
「自由時報」によると、KYB製品は「過去数年間に数十件」の建築で採用された。台北市だけでも大安区、中正区、北投区でKYB製品の採用をPRする物件の広告があったが、問題が発覚してからは次々に姿を消しているという。
例えば2021年に台北市大安区に完成予定のタワーマンション「吉美大安花園」は、9月29日付の「アップル・デイリー」の記事の見出しで、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC構造)と並ぶ形で「KYB制振装置を採用」と紹介されていた。今回の事案発覚で、KYB製品の採用について再検討するという。
台湾当局も利用状況の調査を指示
今回のデータ改ざんを受けて、内政部(内務省)営建署は10月22日、台湾全土の自治体に対して、KYB製装置の利用状況について調査するように指示。改ざんによる影響が疑われる場合には、改めて設計を確認し、必要であれば安全を確保するための対策を取るように求めている。
KYBによると、10月15日時点で、05年から現在にかけて免振ダンパー24本、制振ダンパー71本が台湾に輸出されている。このうち、改ざんの可能性がある範囲については調査中だ。台湾以外の輸出はないとしている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)