皇后さま効果で問い合わせ殺到 英小説「ジーヴス」、出版社「一日で数千冊の注文が」

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「皇后さまもジーヴスがお好きなんだ!」「ジーヴスという執事が登場する小説?興味がわく」――

   皇后さまが公表された「お言葉」の中で、予定されている天皇陛下の退位後に公務を離れてから「楽しみにしている」ことについて読書を挙げ、さらに「ジーヴスも二、三冊待機しています」と触れられたことを受け、「執事のジーヴス」に関心が高まっている。「世界最高のユーモア小説」との評もある英国作家の人気シリーズで、日本語版全訳を出している出版社へは早速、問い合わせや注文が殺到している。

  • 執事のジーヴスが大活躍する『比類なきジーヴス』(国書刊行会)
    執事のジーヴスが大活躍する『比類なきジーヴス』(国書刊行会)
  • 執事のジーヴスが大活躍する『比類なきジーヴス』(国書刊行会)

宮内記者会の質問に文書で回答

   皇后さまは、84歳のお誕生日に合わせて、宮内記者会の質問に文書で回答された。2018年10月20日付朝刊で、全国紙各紙が回答文(お言葉)の全文を掲載した。この中で、読書好きや推理ものファンを刺激する箇所があった。「公務を離れたら何かすることを考えているかとこの頃よく尋ねられるのですが(略)」として、

「手つかずになっていた本を、これからは一冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています」

と読書を挙げ、さらに、

「読み出すとつい夢中になるため、これまで出来るだけ遠ざけていた探偵小説も、もう安心して手許(てもと)に置けます。ジーヴスも二、三冊待機しています」

と「ジーヴス」に言及された。

   毎日新聞記事では、本文でもこの箇所を紹介し、「ジーヴスは英国の作家、P・G・ウッドハウスの作品に出てくる執事の名前だ」と説明を加えた。

   こうした報道が出ると、ツイッターには

「皇后さまもジーヴスがお好きなんだ!」
「おおージーヴス!あの執事さん良いよな」

と、ジーヴス・ファンからの反応が相次いだ。中には、

「ジーヴスという執事が登場する小説?興味がわく」

と、読んだことがない人からの感想も寄せられた。

   ジーヴスのシリーズは、イギリスの作家、P・G・ウッドハウス(1881~1975年)の代表作で、お気楽な「ご主人」バーティーに仕える天才執事ジーヴスが、様々なトラブルを解決していくストーリー。日本語訳では、国書刊行会による「シリーズ全14冊」があり、文春文庫でも数冊の翻訳(文春版では「ジーヴズ」表記)がある(翻訳者は国書刊行会版とは異なる)。

出版社ツイッター「た、たいへんなことが...」

   今回のニュースをうけ、両出版社のツイッターは早速反応。国書刊行会の方は、

「た、たいへんなことが...」

と動揺しながら大喜び。さらに、

「有史以来畏れ多くも初の積ん読の詔が発せられたジーブスシリーズですが、在庫が少ないものもございます。お早目に」

とアピール。しかし、

「慌てたせいで『ジーヴス』→『ジーブス』に大間違い!」

と、肝心の主人公の表記ミスを報告するという、おまけもついた。

   文春側も負けていない。

「皇后陛下が読むのを楽しみにされているシリーズ。文春文庫で読めます」(文春文庫)
「(略)文庫2巻によりぬいた弊社版と、多数の作品をそろえた国書刊行会版となっておりますので、まずは弊社版でお試しいただき、沼に落ちたら国書版、というのが(弊社としては)あらまほしきルートかと存じます」(文藝春秋 翻訳出版部、国書刊行会にリツイート)

と、やはり鼻息は荒い。

   ツイッター上だけではなく、実際に反響は出ているのだろうか。J-CASTニュースが10月23日、国書刊行会に取材すると、シリーズ担当の編集部、礒崎純一さんが回答した。同社は、『比類なきジーヴス』(2005年)から『ジーヴスとねこさらい』(12年)まで、「ジーヴス・シリーズ全14冊」の完訳がある。

   「お言葉」の公表があったのは土曜日の20日。週が明けて月曜の22日は、朝から「電話が鳴りやまず」、書店や個人からの注文や問い合わせが殺到した。1日だけで、数千冊の注文があり、品切れの巻も出たため、早速「重版」を決めた。

   たとえば1冊目の『比類なきジーヴス』は、累計2万冊が売れるなど、人気があるロングセラーだが、さすがに2012年のシリーズ完訳から何年も経ったここ数年は、シリーズ全体で「1年で100冊から数百冊出るか出ないか」といった売れ行きだった。いかに、「1日で数千冊」の注文が大きな反響かが分かる。

「とにかく笑える楽しい話です」

   礒崎さんは、シリーズの概要について

「天才執事のジーヴスが、極楽とんぼみたいな主人バーティーのピンチを助ける展開です」

と説明。「探偵本」というよりは、「世界最高のユーモア小説」と評されているそうで、実際、数々の事件やトラブルでも「人が死んだりする暗い話は出てきません。とにかく笑える楽しい話です」。

   また、イギリス本国では、ジーヴス・シリーズはシャーロック・ホームズに並ぶほどの知名度があり、作者のウッドハウスは国民的作家として今でも人気があるという。エリザベス女王の母(故人)が生前に愛読していたことや、トニー・ブレア元英国首相が作品のファンであることも、よく知られたエピソードだそうだ。

「日本でいえば、司馬遼太郎や松本清張といったイメージでしょうか」

   最後に、まだ読んだことがない人へのメッセージを質問すると、

「読むと人生が楽しくなる話ですよ」

と勧めていた。

   ジーヴス・シリーズは、翻訳書以外にも『プリーズ、ジーヴス』(白泉社)などのタイトルで漫画化されている。

   今回、国内では必ずしも有名ではない英国作家の作品の名前に触れられた皇后さまだが、大学の卒論では1932年にノーベル文学賞を受賞した英国作家のジョン・ゴールズワージー(1867~1933年)を取り上げられたエピソードが知られている。

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