毎日新聞への投書がスタート 乳がん患者会会長40年、ワット隆子さん退く

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   乳がん患者会「あけぼの会」の創立40周年記念大会が2018年10月14日、東京・有楽町の朝日ホールで開かれた。その40年間、ずっと会長を続け、がんの世界では著名なワット隆子さん(78)が会員の感謝の声を背にその日で退任した。

  • あけぼの会の公式サイトには、きっかけになった新聞投書が掲載されている
    あけぼの会の公式サイトには、きっかけになった新聞投書が掲載されている
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新会長は深野百合子さん

   ワットさんは1977年2月、東京都内の病院で乳がん手術を受けた。当時はがん=死、のイメージが強く、告知もまれだった。再発の不安もあり、翌年5月、『毎日新聞』への投書で体験者の会を作ろうと呼びかけた。10数人で「あけぼの会」が始まったのが10月。珍しい取り組みと報道され、最初の4か月で会員は400人を超えた。都道府県の支部もでき、以来、毎年10月には全国大会を開いている。

   元スチュアーデスで英国人を夫に持つワットさんは徹底して患者中心の医療を追求、医師や病院、製薬企業、海外の患者団体などとも協力関係を押し進めた。全国各地で講演会を開き、乳がんの検診、治療、予防など啓発活動を展開した。

   40周年記念大会のスローガンは「日本女性と乳がん・私たちは何を変えたか、そして未来!」。ワットさんは開会の挨拶で、この40年で患者は自分で治療法を決めるほど賢くなった、あけぼの会は医師たちとも好ましい関係を保ちながら患者と伴走した、と話した。

   また、娘、息子など家族を紹介し、夫は2005年にALS(筋萎縮性側索硬化症)を発病、12年に亡くなったことを報告、「40年間、やることは十分にやった。もういいでしょう」と、勇退の弁を述べた。会場を埋めた会員からワットさんへの感謝の声が上がり、横膜が掲示された。

   大会の目玉はがん研有明病院の大野真司乳腺センター長ら日本の乳がん治療をリードする6人の現役医師の講演とシンポジウムだった。質疑応答では医師の説明がまだまだ不十分だとの不満の声が出た。「医師にも患者さんとの相性の問題もあるが、プロとしてもっと考えなければ。医師のコミュニケーション教育が必要だ」「診療時間が短すぎる。余裕のある診療体制を作る必要がある」と医師たちは答えていた。

   新しい会長には、あけぼの福岡代表の深野百合子さんが選ばれた。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

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