失業率が上がると男性の自殺が増えるが、女性は...
後期の中高年の男性(40歳~65歳)の自殺が、一週間を通じて月曜日に集中し、一番少ない週末の土曜日に比べると、1.55倍多くなった。また、一日をとおした時間帯をみると、朝(午前4時~7時59分)が最多で、一番少ない深夜(午後8時~11時59分)の1.57倍に達した。つまり月曜の早朝、出勤前の時間帯に飛び抜けて自殺者が多いのだ=図表(1)参照。
自殺の方法は首つりが圧倒的に多く、次いでガス中毒が目立った。
この傾向は、若い男性(20歳~39歳)にもみられるが、図表(1)のグラフの山を見てもわかるように、中高年男性に比べると、月曜早朝に集中する頻度は、3割~5割ほどに低い。ところが、景気がよかった前期には、世代、曜日、時間帯に大きな違いはなかった。前期と後期を比較した同じ中高年男性のグラフ(図表(2))を見ても、はっきりした違いがわかるだろう。不況を背景に自殺の曜日と時間帯のピークの傾向が表れるのだ。
上田さんらは、さらに景気悪化の指標に失業率を使い、失業率の上下と早朝に自殺する人数の関連も調べた。すると、失業率が上がると、若者と中高年男性のみ自殺が増えることがわかった=図表(3)。女性や66歳以上の高齢男性は、こうした好不況の影響を一切受けない。むしろ、女性や高齢男性は景気に関係なく、昼の12時前後に自殺する割合が高いという。
こうした傾向はいったいどういうことか。上田准教授に聞くと――。
――月曜日の早朝に集中するということは、「ブルーマンデー」が影響しているのでしょうか。
上田さん「警察の調書と違って、医師の診断書に動機までは書いていないので断定はできませんが、景気のよかった1994年以前には、月曜や早朝に集中する傾向はまったくありませんでした。また、失業率が悪くなると男性の出勤前の自殺が増えることから、不況になると会社に行くことが辛くなり、ブルーマンデー状態になったと考えられます。
98年~99年のアジア経済危機の時に自殺者が急増するピークがありました。また、自殺者が一番多かったのが2003年の世界株価大暴落の時です。おそらく、労働環境が悪化したことが関係しているのではないでしょうか」