空白の一日事件の悲劇と和解
78年、当時の野球協約の死角をついて巨人が江川氏と選手契約を結んだことが、世間を巻き込んでの一大事件に発展。結局は、巨人との契約が無効となり阪神が交渉権を獲得したが、ここで悲劇が生まれる。
高校卒業以来、巨人入団を熱望していた江川氏の意向を受けた阪神は、シーズンを待たずに巨人とのトレードという形で放出。巨人からトレードに出されたのは当時エース格の故・小林繁氏だった。
巨人入団に際して遺恨を残したくないとして江川氏は金銭トレードを望んだというが、それは叶わなかった。世間は江川氏を「悪」、小林氏を「悲劇のヒーロー」として見た。事件の当事者である2人は現役時代、言葉を交わすことはなかったという。
2人が「和解」したのは2007年秋。日本酒のCMに江川氏と小林氏が共演し、現役当時を振り返りながら杯を交わすものだった。「空白の一日事件」から28年ぶりの和解だった。
だが、江川氏は球界復帰にあたってこの事件がいまだに尾を引いているという。当事者同士は和解したものの、球界内にはいまだに「江川憎し」の声があるのは確か。日本球界に汚点を残した代償をいまだに背負っている。
もうひとつ、球団入りを拒む理由とされるのが金銭面である。プロ野球の解説者とは別に実業家としての顔を持つ江川氏だが、関係者によると、株の投資などに失敗し、一時、多額の負債を抱えていたという。
球団監督または、コーチのギャラでは負債を返却することが難しく、高額なギャラが支払われるテレビの仕事をあえて選択したといわれている。
江川氏の現役時代からのライバルで、同年齢の阪神・掛布雅之オーナー付シニアエグゼクティブアドバイザーは、来季も同職でフロントに残ることが濃厚である。今回もまた待望論だけで終わってしまうのか。CS終了後にも巨人の新体制が固まる。