安倍晋三首相が2019年10月に消費税率を予定通り8%から10%へ引き上げると表明したことを受け、新聞各紙の論調が出そろった。大手紙の中では明確に引き上げに反対する論調はみられず、新聞や食料品などに導入される8%の軽減税率については、準備を急ぐように求める声が相次いだ。
ただ、宅配される新聞にも軽減税率が適用されることについては、ほとんどの新聞が「スルー」。正当性を訴える社説は皆無と言ってよく、批判の声もあがっている。
朝日「円滑に」、読売「周知徹底を」...
引き上げ表明翌日の18年10月16日付けの社説では、引き上げについて朝日新聞が「何のために増税するのか。税の将来像をどう考えるのか」について説明を求め、産経が「国民に増税への理解を求めることも重要」だと主張。毎日は「増税を予定通り行うのは妥当」、読売は「評価できる」といった具合で、明確に引き上げに反対する論調は見当たらなかった。
軽減税率については、
「導入を決めた以上は円滑に進むよう、知恵を出さねばならない」(朝日)
「混乱を避けるため、政府は関連事業者に準備を促す必要がある」(産経)
「小売店によるレジの改修や買い替えなど、事前準備は遅れている。政府は周知徹底に努める必要がある」(読売)
などと、小売店の負担が増えることに対する対策を求める声が目立った。毎日新聞は 「景気対策の必要性を過剰に強調すれば与党の要求に拍車をかけるだけではないか」 として軽減税率そのものに対する論評はなく、日経新聞は軽減税率に関する直接の言及がなかった。
読売は3日前の社説でも意義を強調
各社で分かれたのが軽減税率の説明だ。多くの社が
「食品などの税率は8%に据え置く軽減税率」(朝日)
「食料品などの税率は8%に据え置く軽減税率」(毎日)
「飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率」(産経)
と、食料品を前面に押し出したのに対して、読売は
「今回の増税では、食品と定期購読される新聞に、8%の軽減税率が適用される」
と、新聞にも言及。10月13日の社説でも、今回の増税による家計の負担増が2兆円にとどまるという日銀の試算を紹介しながら、
「引き上げ幅が小さい上に、食品と定期購読されている新聞に、8%の軽減税率が適用されるためである」
などと軽減税率の意義を強調する念の入れようだ。
ただ、それでも新聞への軽減税率への理解は得られているとは言えないようだ。例えば国民民主党の玉木雄一郎代表はツイッターで、10月16日の読売社説の「実施へ首相の覚悟が問われる」というタイトルを引き合いに、
「安倍政権と談合して、新聞業界だけ軽減税率のメリットを受けておいて、もっともらしいことを言う。軽減税率を返上してから言え、という印象しかない。こんなこと繰り返すから新聞への信頼が低下する。税制の公平、中立、簡素を守れとなぜ言えないのか」
などと新聞業界を非難した。