プロがマラソンならアマは100m走
また、プロにとって大きなリスクとなるのが負傷だ。現在、アマチュアの試合ではプロ同様にヘッドギアを着用していない。そのためこれまでよりバッティングによるケガのリスクがより高くなっている。プロの選手生命にかかわってくるような負傷もありえるだけに、そのリスクを負ってまでリングに上がる選手は多くないだろう。
同じボクシングでもプロとアマチュアでは競技が異なるといわれるほど、その性質が異なることもプロが避ける要因である。
プロの世界戦は3分12ラウンドを戦う。一方のアマチュアは、どの大会だろうが3分3ラウンドだ。陸上競技に例えるならば、プロはマラソンでアマチュアは100メートル走に近いものがある。
プロでは36分間の中で決着を付ければよいが、アマチュアはわずか9分間で勝負が決まる。プロとアマチュアの大きな違いは判定基準にあり、相手にダメージを与えたパンチがポイントにつながるプロに対してアマチュアが求められるのは破壊力ではなく手数だ。いかに3分の間に相手の顔面、ボディーにパンチを打ち込めるかが重視される。
競技性の違いはリオ五輪で顕著に見られた。
日本で井岡一翔選手に勝利した実績を持つ元IBF世界フライ級王者アムナット・ルエンロン(タイ)は2回戦敗退。元WBA世界ミドル級王者で、現WBA世界ミドル級王者・村田諒太選手の挑戦を退けたことで知られるハッサン・ヌダム・ヌジカム(フランス)は1回戦で敗退し、準決勝進出がプロ選手の最高成績だった。
高山選手は、日本史上初めてWBA、WBC、WBO、IBFの世界4団体のベルトを巻いたが、アマチュアの実績はない。すでにプロを引退しているためアマチュア選手として東京五輪を目指すことになる。現在のところ、世界のトッププロで東京五輪の参加を表明するものはいない。