安倍晋三首相は2018年10月15日午後の臨時閣議で、19年10月に消費税率を予定通り8%から10%へ引き上げると表明した。立憲民主党・枝野幸男代表が「なぜこのタイミングなのか、さっぱり意味が分からない」と批判するなど反発も出ている。
公明党の主張で導入の方針が決まった食料品などに対する軽減税率についても批判が多い。食料品であれば、持ち帰るか店舗で食べるかによって税率が変わるなど手続きが煩雑なことが大きいが、条件を満たした新聞が適用対象に含まれていることにも「公平性も公正性もない」などと批判が再燃している。
枝野代表「低所得者に対する支援には必ずしもならない」
枝野氏は10月15日夕方放送の「斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!」(文化放送)で、
「問題は、軽減税率を取ったからとして低所得者に対する支援には必ずしもならない(という点)。お金持ちほど、その軽減税率分についても沢山使うという状況。しかも何故か新聞が入っているというおかしな話もある」
などと軽減税率の意義に疑問符をつけた上で、仮に低所得者層への対策を行うとすれば、食料品にかかっている所得税を返したり、所得税を支払っていない低所得者には相当額を給付したりする「戻し税」方式を導入すべきだと主張した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は15日のツイッターで、コンビニで買った食料品が店内で食べれば10%、持ち帰れば8%になり、新聞は駅売りが10%、宅配が8%になったりと税率が変化する方針になっていることについて、
「訳がわからない。しかも逆進性対策にもならず税収には1兆円も穴があく。さらにインボイスを出せない免税事業者は取引から排除されるから中小零細企業の廃業促進税制になる」
などと問題点を指摘。とりわけ宅配の新聞に軽減税率が適用されることについては
「自分たちだけお手盛りのメリットを受けて政権のヨイショ記事を書いて、一方で、国民みんな増税負担しろ?財政再建が大切だ?公平性も公正性もない、簡素でもない、税の基本原則に反する、こんなデタラメな複数税率、認めるわけにはいかない。ほんとデタラメ」
と手厳しい。
共産党も軽減税率の導入には
「逆進性の緩和には程遠く、自動車や住宅の減税はもともと購入力がない国民には何の恩恵にもなりません」(10月12日「しんぶん赤旗」)
と批判的な立場だ。
菅長官「全く変わらない」
消費税率の10%への引き上げをめぐっては、当初は15年10月に予定されていたが、14年11月に17年4月に延期すると発表。その際、安倍氏は「再び延期することはない」ことを「断言いたします」とまで述べていたが、16年6月、さらに2年半延期して19年10月にすることを発表していた。
ただ、これまで政府は税率引き上げの条件として「リーマン・ショック級の出来事がなければ」と繰り返している。菅義偉官房長官は18年10月15日の会見で、「これまで述べてきたとおりで全く変わらない」と発言。改めて引き上げが延期される可能性に含みを残している。
一方、軽減税率の導入を求めてきた公明党の山口那津男代表は
「安倍総理もこの消費税率の引き上げ、そして使い道の教育費負担軽減への変更、軽減税率の実施、そして駆け込み需要反動減などに対応する需要の平準化について明確に述べており、世の中の戸惑いを早くなくして準備を急いで、混乱なく実施されることが望ましい」
などと述べ、予定通りの引き上げ実施を求めた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)