阪神・矢野新監督の苦渋の決断 球団社長が謝罪したワケ

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   阪神の矢野燿大2軍監督が来季、1軍監督に昇格することが2018年10月15日、決まった。矢野2軍監督はこの日午後、兵庫・西宮市内の球団事務所を訪れ、1軍監督就任要請の受諾を伝えた。

   苦渋の決断だった。10月11日、金本知憲監督が今季最下位の成績の責任を取る形で辞任を表明。球団は後任を矢野2軍監督に一本化し、10月13日に揚塩健治球団社長が宮崎でフェニックス・リーグに参加中の矢野2軍監督のもとを訪れ、正式に1軍監督就任を要請した。

  • 阪神の本拠地・甲子園球場
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現場スタッフ人事に余震

   揚塩球団社長との約1時間半の会談では、金本監督の辞任の「真相」が揚塩球団社長の口から明かされたという。一部報道で金本監督の辞任は、球団が辞任を迫ったもので事実上の解任とみられているが、これに関して揚塩球団社長は多くを語らなかった。一方で、矢野2軍監督には謝罪したという。ただ、この謝罪は、解任説の肯定とも取れる行為で、矢野2軍監督はそれを踏まえた上での決断だったとみられる。

   今季、17年ぶりの最下位となった阪神の課題は山積している。金本監督の辞任により、動き出していた現場スタッフの人事は一旦、白紙に戻った。金本監督の辞任にともない、片岡篤史ヘッド兼打撃コーチが辞任するなど、余震が続いている。

   西武と中日で活躍した和田一浩氏を1軍打撃コーチに招へいするプランは、金本監督の辞任で消滅の可能性があったが、和田氏は東北福祉大で矢野2軍監督の後輩にあたるため、再びコーチ就任の可能性が浮上した。

   球団は金本監督の積極的な若手起用を評価し、矢野2軍監督も金本監督の意志を継ぐことになるが、球団が金本監督に辞任を迫ったことが真実ならば、球団が与えた金本監督への評価は懐疑的である。

ドラフトの優先順位は? FA補強は?

   このような中で10月25日にはドラフト会議が控えている。上位指名は「投手」か「野手」か。また、「即戦力」を優先するのか将来を見据えて「若手」を取るのか。現場スタッフを固め、来季の方針を打ち出すのが急務となる。

   金本監督が推し進めていたドラフト戦略は、投手陣の補強だった。だが、ここにきて状況が一変したこともあり、本社、球団が推す大阪桐蔭高の根尾昴選手を1位指名する可能性も。球団と現場の意見の統制が急がれる。

   補強もまた急務である。今季、貧打にあえいだ阪神は、FAで打線の軸となる選手を獲得したい。ここで浮上するのが、西武の浅村栄斗選手だ。地元大阪桐蔭高出身の27歳は、今季143試合にフル出場し、打率.298、32本塁打、127打点をマーク。球団はすでに調査に入っているが、チームの立て直しには必要不可欠な選手だ。

   投手陣では、藤波晋太郎投手の再建が大きな課題となるが、コーチ人事は現時点では不透明である。金本監督の就任にともない2軍投手コーチから1軍コーチに昇格した香田勲男コーチ。金村曉投手コーチは、金本監督の声掛けでコーチに就任した経緯があり、同じような立場だった片岡コーチが辞任しているだけに、その去就が注目される。

   これ以外にも1軍ヘッドコーチの人選など、チーム再建に多くの課題が残されるが、矢野2軍監督はそれらすべてを背負って来季、チームの指揮を執る覚悟だ。

「本当に悩んだんですけど、逃げてやらない後悔よりも、やってみるべきかなと思いました」

   80年以上の長い球団の歴史の中で、最下位となって監督が交代した翌年にチームが優勝した例はなく、1950年、79年、2002年の4位が最高となっている。

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