16歳で自殺した愛媛のアイドルグループ「愛の葉(えのは)Girls」の大本萌景さんが、所属事務所と結んでいた契約内容の「恋愛禁止」に絡め、2018年10月15日の「とくダネ!」(フジテレビ系)でキャスターの小倉智昭さん(71)が述べた言葉にインターネット上で批判が殺到している。
小倉さんの発言は、事件と直接関係のない「冗談」だった。共演者一同は苦笑い。ネット上では「不謹慎」「どう言う神経してるんだろう?」といった声が続出した。
「まあ、私も契約は事務所と結んでいますけど...」
萌景さんの遺族は12日、所属事務所「hプロジェクト」に損害賠償請求訴訟を提起。遺族側の11日の会見によれば、萌景さんは学業と両立困難なほどスケジュールを詰め込まれ、3月に次回の契約更新をしない旨を事務所に伝えた。だが、佐々木貴浩社長に言われたのは「違約金1億円払え」という言葉。萌景さんは翌3月21日に命を絶った。佐々木氏自身は発言を否定している。
萌景さんは同事務所と締結していたマネジメント契約には、14項目に渡る「禁止事項」が含まれていた。そこには「恋愛、公共の場での飲酒、喫煙、その他アイドルとしての価値を低下させる行為」と、恋愛禁止が明記されていた。
「とくダネ!」にゲスト出演した山田秀雄弁護士は、「これまでタレントさんの契約書も一般的な労働契約書も見てきましたが、それらと比べても禁止条項が多すぎます。かなりプライベートな部分も縛っています」と驚きを隠さず、
「恋愛というのは人間の根源的な欲望に基づくもの。恋愛した結果、たとえば遅刻する、会社に迷惑をかけるということであればペナルティは発生するでしょうが、恋愛すること自体を禁止事項に入れるのは問題になります」
と指摘した。
こうした「恋愛禁止」条項の是非がクローズアップされた放送の中、キャスターの小倉智昭さんは最後に突如、
「まあ、私も契約は事務所と結んでいますけど、その中に『恋愛禁止』があったかどうか、ちょっと調べてみたいと思います」
と、事件と無関係な自身の話を展開。「ボケ」と受け取ったスタジオ一同からは、どうにか反応せざるを得ないといった様子で苦笑いが漏れた。
「不謹慎」「茶かすなよ」
だが、命が絶たれている問題を扱う中で出た小倉さんの発言には、疑問視したり不快感を示したりする声が続出。ツイッターやインターネット掲示板では、
「人が死んでるのにお笑いで終わらすクソ司会者」
「何だその笑い話で閉めは?不謹慎」
「茶化すなよ」
「愛媛のアイドル自殺の話題を司会者が笑いネタコメントで締めくくった事に驚きを隠せない。どう言う神経してるんだろう?」
「アイドル自殺のニュースで最後小倉さんが冗談で締めるという醜悪さ」
といった批判が殺到している。
なお番組では、アイドルのプロデュースも手掛ける作家・橋口いくよさんが、アイドル業界の現状から、こうした契約内容が盛り込まれるに至った要因を分析する場面もあった。「そもそもこれ(萌景さんの契約内容)は酷いというのが大前提です」と前置きした上で、
「アイドル業界全般が、よほど大手でない限り儲かっていないのが現状です。『戦力』を失うことが怖いと運営が思っています。若い子は大人と違い、恋愛をした時に分別をもって仕事を大事にできなくなるかもしれない。楽しくなると仕事に来なくなるという経験がきっとおありで、こういうこと(禁止事項)を決めていくうちに酷くなってしまったのではないでしょうか」
と見解を述べた。「今回は契約書に書いてあるので証拠としてありますが、契約書になく、暗黙の中で縛っていることの方がすごく多く、怖いことです」とも指摘していた。