「死後離婚」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
2018年10月15日放送「あさイチ」(NHK)では、近年増加しているという「死後離婚」を取り上げた。ここでいう「死後離婚」は夫の死後、妻が「姻族関係終了届」を提出して夫の親族との関係を断ち切ることであり、戸籍上の変化はなく、夫や子どもとの関係は変わらない。この「死後離婚」という言葉に対し、違和感を覚える視聴者が多数いたようだ。
博多大吉「言葉が強い気がする」
番組VTRでは、実際に「姻族関係終了届」を提出したという女性を紹介した。女性は夫の生前、夫の親族とは仲が良かったが、金銭トラブルから親族への不信を募らせ、「姻族関係終了届」の提出に至った。提出前は、「夫の親族と縁を切ることは、夫と縁を切ることと同じではないか」と悩んだといい、「死後離婚」という言葉は「少し違う」と感じているという。
VTRを見た出演者の博多大吉さんは、「『死後離婚』という言葉が強い気がする」と発言した。また、視聴者からは同様の体験談がファクスで寄せられた。夫の死後3年経って姻族関係終了届を提出したという女性は、「夫と離婚したという気持ちは全くありません」と綴っていた。
「今でも夫と子供のことを大切に思っておりますし、再婚する気もありません。なので、死後離婚という言葉には違和感があります」
これに対し、番組で「死後離婚」を解説した、丸の内ソレイユ法律事務所の中里妃沙子弁護士は、「私も非常に違和感がありまして、『死後離婚』は法律用語でもないんですよね」と、同意した。続けて、「これを機に言い方を少し変えるということもあってもいいかと思います」と話した。
中里弁護士「戦前の家制度を引きずっているのでは」
違和感を覚えたのは、出演者や体験者だけではない。番組を見たと思われるユーザーからは、
「配偶者との縁じゃなくて、切るのはその親族だよ。全然違うよね意味合いが」
「死後離婚といえるのは復氏届?を出された方くらいではないか。 あとは姻族関係終了のがしっくりくる」
「いつ誰が使い始めたかわからないワード。『死後離婚』それなら使わない方がいいのでは」
J-CASTニュースは15日、出演者の中里弁護士に「死後離婚」という言葉について、あらためて話を聞いた。中里弁護士は番組中で「(『死後離婚』という言葉に)違和感がある」と発言したことに対し、「それは本当にそう思います」と断言した。言葉の出どころや、使われ始めた時期については分からないとしながらも、「死後離婚」という言葉が使われている理由については、
「戦前の家制度を引きずっているのではないでしょうか。戦前の結婚は、夫と妻が結婚するというよりは、妻が夫の家に入るという認識が強かった。夫の家と別れる=離婚と同じ意味、ということではないでしょうか」
と推測した。続けて、「『死後離婚』の制度自体が、古い家制度のようなものですしね。そもそも妻は夫の親族の扶養義務を負ってないので、わざわざ姻族関係終了届を提出する必要はないです」と話した。
J-CASTニュースが日経テレコンを使って記事検索をした範囲では、「死後離婚」という言葉が確認された最も古い記事は、1989年9月21日の北海道新聞のコラム「卓上四季」だった。ここでは、死んだ後は夫婦別々の墓に入りたいという心情を「一種の死後離婚願望」として表現しており、「復氏届」のニュアンスで使われている。一方、「夫の親族と縁を切る」という意味では、たとえば2016年12月30日の産経新聞(東京朝刊)「『死後離婚』急増 『介護不安』...配偶者の親と関係解消」などが確認できたが、いつごろまでさかのぼることができるのかは、はっきりしなかった。