巨人のエース菅野智之投手が2018年10月14日、ポストシーズン史上初となるノーヒットノーランを達成した。ヤクルトに許したのは7回2死から山田哲人選手に与えた四球のみで、7奪三振、113球の準完全試合で、CS最終ステージ進出を決めた。
力で押すだけではなく、打たせて取るピッチングで凡打の山を築いた。完全試合こそ逃したが、抜群のコントロールでヤクルト打線を封じ込めた。これぞ菅野の真骨頂だった。
あのノムさんも菅野をべた褒め
ヤクルト、阪神などで監督を務めた野球解説者の野村克也氏は、菅野の快投を手放しで絶賛。野村氏は10月15日、「S☆1」(TBS系)に出演し、「本当にいいコントロールしている。これ以上に楽しい投手いないよ。俺も引退したけど、受けてみたくなる投手」と鼻息を荒らげ、さらに「技巧派でもきちっとコースに投げればこういう結果になるという見本のような投球だった」と、称賛は止まらなかった。
海の向こうでも菅野の快挙は速報で伝えられた。メジャースカウトから「日本一のピッチャー」と評される菅野は、今回の快投でさらに評価を上げたようだ。
14日の試合を観戦したというメジャーの現役スカウトにJ-CASTニュースが話を聞いたところ、「スピードは抑えていたみたいだが、スライダーの切れが抜群だった。コントロールがいいからストレートがそんなに走っていなくても変化球で打ち取れる。メジャーで菅野投手を今すぐにほしい球団は多いと思いますよ」と、メジャー即戦力の評価を与えた。
今季、巨人からカージナルスに移籍し、18勝をマークしてナ・リーグ最多勝(タイ)投手となったマイルズ・マイコラス投手は、今年6月、地元紙のインタビューで菅野の可能性に関してこう言及している。
「スガノは間違いなく、メジャーで通用するピッチャー。彼なら先発ローテ入りは間違いない。三振を取りたいところで取れるし、併殺に仕留めたいところでは凡打を打たせる。僕も彼のスタイルに学んだところはたくさんある」
「心配されるのは肩の消耗」
米国での評価は上がる一方の菅野が、メジャーのマウンドに立てるのは早くても海外FA権を取得する2022年シーズンからとなる。ポスティングでの移籍の手段はあるが、来季から叔父の原辰徳氏が巨人の監督に就任するため、海外FA権を取得するまでは日本に「残留」するしかないだろう。
巨人に入団以来、メジャーに関する話題を封印してきた菅野は、昨年末、メジャー移籍に関して初めて公の場で言及した。
「これから3、4年ありますが、絶対的な力をつけて文句なく行けるようにしたい」
2022年以降のメジャー移籍を見据えての発言だったが、前出のメジャースカウトは菅野の29歳という年齢を考慮した上で4年後の価値を「試算」した。
「体力、精神的にもここ1、2年がピークでしょう。30歳を過ぎれば球威は落ちてくる。メジャーでは球威がないと、簡単にホームランを打たれてしまう。制球の良さはメジャーに行ってもトップクラスですが、4年後となると33歳ですからね。今の菅野選手の価値の6掛けから7掛けがいいところでしょう」
日本からメジャーに移籍して活躍した多くの投手が20代半ばで海を渡っている。松坂大輔選手は26歳、田中将大は25歳、パイオニアの野茂英雄氏がメジャー入りを果たしたのは27歳だった。
前出のメジャーススカウトは最後にこう付け加えた。
「菅野投手に関して一番、心配されるのは肩の消耗ですね。球団が投げさせ過ぎなければいいんですが」
CS最終ステージ進出を決めた巨人は、以降のポストシーズンで菅野を先発、中継ぎ、抑えと、フル回転させる可能性もある。巨人の下剋上日本一は菅野の肩にかかっている。