ジャック・マーの「達摩院」 1.6兆円投資の野望

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   2018年9月19日に開催されたアリババ(阿里巴巴)グループのテクノロジーの祭典とされる「2018杭州・雲栖大会」で、同グループはは半導体チップの研究開発を行う新会社「平頭哥半導体有限公司」の設立を発表した。平頭哥は、角刈り兄さんの意味で、獰猛なイタチ科の動物である「ラーテル」も指している。

   同公司は、来年には初となるニューラルネットワークチップを生産し、2、3年以内に真正の量子チップを製造することも合わせて伝えた。これは、アリババが半導体チップの自主研究開発及び量子計算ハードウェアの世界的な競争に加わったことを意味している。

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武侠小説好きの創業者が命名

   すでに、半導体チップ及び量子計算ハードウェアの研究開発を担う機関は、アリババ達摩院(Alibaba DAMO Academy )と称され、2017年10月11日に杭州で設立が発表されている。アリババグループの張建鋒CTOが初代院長に就任、最先端の科学技術を模索するために、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が、3年間で1000億元(約1兆6000億円)を投じる計画という。

   中国の武侠小説では、少林寺達摩院こそ武術修行の最高の場とされており、武侠小説好きの馬雲氏が、研究所の名前にした。この達摩院がベル研究所やIBM、マイクロソフトのラボのように、人類の科学技術の発達をけん引する存在となることを、馬雲氏は狙っている。

   達摩院は多くの社会問題を一つの表にまとめ、世界中のほとんどの有名大学や研究機関に送り、教授や学者たちが各々興味を持っている研究方向と表に列挙されている問題が正確にマッチングできるようにした。

   世界中の教授や学者たちからのフィードバックを基に、達摩院は現在すでにマシンインテリジェンス、データ計算、ロボット、金融科学技術及びX(このXの意味はまだ分からないが、最も考えられるのは量子計算または人工知能)の5大核心領域を確立したとしており、世界各地からトップレベルの専門家を招聘して各領域の責任者に据えている。

日本企業の脅威となるか、協力できるか

   達摩院では、今では世界各地から集まった300人を超える科学者たちが働いており、世界中に研究開発センターが8カ所、ラボが14カ所設置されている。達摩院による国際科学研究協力ネットワークがすでに形成され、清華大学やスタンフォード大学を含む幾つもの国際的なトップクラスの科学研究機構がすべて達摩院の協力システムに加わっている。

   人工知能で最も重要なのは、アルゴリズム、データ及び計算力の3つであり、達摩院の張建鋒院長は、人工知能が直面している根本的な核心問題を全て解決し、デジタル化のエコシステムを確立したいと考えている。

   達摩院は設立からわずか1年で、特に量子とチップの領域で国際的な業績を成し遂げている。世界最強の量子回路シミュレーターを発表したほか、今開発している量子チップのコストパフォーマンスは世界最高の同種製品の40倍以上とされる。

   馬雲氏は、達摩院における研究成果が市場や商業界、社会で生かされることを求めており、達摩院の院長は強いビジネスセンスを備えていなければならないとも語っている。

   半導体などの生産の面では非常に多くの技術、ノウハウを持っている日本企業だが、達摩院について日本ではほとんど知られていないようだ。そもそも日本では大企業の研究院はどんどん縮小しており、個人で1兆円以上の巨額の資金を投じて研究院を作ることもあまり聞かない。日本企業にとって、達摩院は脅威となるのか、それとも協力の相手となるのか。筆者は注目している。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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