元サッカー日本代表の永島昭浩氏(54)が、2018年10月13日の日本対パナマ戦(3-0)中にサッカー用語の違いを解説したところ、正誤をめぐって疑問の声が相次いだ。
解説したのは「クロス」と「センタリング」と「横パス」の違い。ボードを使って指摘したが、「適当すぎ」といった声がツイッター上であがっている。サッカージャーナリストに見解を聞いた。
素朴な疑問に専門家が答える企画
永島氏は、代表チームの公式スポンサー・キリンが運営するツイッターアカウント「知識ゼロで楽しむサッカー日本代表戦」の企画に登場。9月から日本代表戦の際に運用されており、駆け出しサッカーファンのために、素朴な疑問に毎回異なる専門家が答えていくというものだ。パナマ戦ではこの専門家が永島氏だった。
永島氏はこの日、「クロスって何ですか?」とサッカー用語の質問を受けた。回答ではサッカーコートの図を描いたボードを使い、サイドライン際に相手ゴールから遠い順で「1」「2」「3」と示した。そこから中央のゴール前に伸びていく矢印をかきながら、
「1がクロスと言います。2は横パス。3はセンターリング。クロスボールというのはサイドから中央にゴールに向かって蹴るボールのことです」
としていた。図と言葉を照らし合わせると、サイドから中央に入れるボールのうち、
・クロス=浅い位置からプラス方向(前方)に向かうもの ・横パス=真横に出すもの ・センタリング(センターリング)=深い位置からややマイナス方向(後方)に向かうもの
と定義づけているようだ。
しかし、この説明には疑問が示されることになった。「こんな酷い解説を垂れ流さないで欲しい...」「少なくともこれは違うと思うわ」「適当すぎ」といった指摘が続々とあがり、物議を醸しているのだ。
「同じ意味で使われています」
実際、永島氏の解説を専門家はどう捉えるのか。サッカージャーナリストでJFA(日本サッカー協会)公認指導者ライセンスも取得している石井紘人氏にJ-CASTニュースが見解を尋ねると、
「クロスもセンタリングも、基本的にサイドからゴール前にボールを入れるという同じ意味で使われています」
と話す。プラス方向、マイナス方向はあまり関係がないという。「横パス」については「何でも横パスと言えてしまうので、どういう横パスかにもよりますね」とするにとどめている。
ただ、「『センタリング』という言葉は和製英語で、昔に比べて近年は現場で使われなくなっており、死語になりつつあります。元々『センタリング』と言われていたのが、『クロス』『クロスボール』に取ってかわっている状態です。浅い位置から放り込むもの(編注:永島氏の図の1)は『アーリークロス』、深い位置でやや後方に向かうもの(同3)は『マイナスのクロス』とも言いますね」という。
JFA公認指導者ライセンスの講習でも、「用語を海外と統一しようという狙いが見えます。その中で『センタリング』という言葉も使わなくなっていったのではないでしょうか」とのことだ。
たとえば「ハンド」という反則。石井氏は「海外では『ハンドリング』や『ハンドボール』という言い方が一般的になっています。日本では『ハンド』の方が馴染みがあると思いますが、日本でもサッカーに携わる方々の間では『ハンド』と言わない方もいます」と話す。
こうした点から石井氏は、永島氏の解説について
「現代のサッカー界のスタンダードな認識ではないと思います」
との見解を示した。
その上で、「知識ゼロで楽しむサッカー日本代表戦」の企画について、
「JFAの技術委員会などが関わるべきではないかという気がします。あるいは、公認指導者ライセンスの講習で使われる言葉に統一して解説した方が良かったと思います。指導者用の教本もありますので、マニュアルを作るなどもできるでしょう」
と話していた。