リプライで送られてきた画像で「ない本」を作ります―――。
2018年9月に登場したアカウント「ない本」(@nonebook)。ここに画像を投稿すると、アカウントの主がそれをもとに「ない本」を作ってくれるという。「ない本」とは一体どういう意味なのか。10月10日、アカウントの主は対応に追われて疲れているとしながらも、J-CASTニュースの取材に快く応じてくれた。
本物さながらに作りこまれた「ない本」
アカウントの主はハンドルネーム・能登たわしさん(@nottawashi)という人物。能登さんは「ない本」アカウントで画像を募集し、送られた画像は本の表表紙に使用される。表紙カバーは本物さながらに作りこまれているが、肝心の物語が「ない」ことから、「ない本」と呼んでいる。
これまでに作ったのは、ツイッターにあげられている以下の9作品で、カギカッコ内が本のタイトル、カッコ内が著者名となっている。どちらも凝っており、「何か意味があるのか」と勘繰ってしまった記者だが、能登さんいわく、「(画像に)合うようにてきとうです!」とのことだ。ちなみに出版社はすべて、「膝掛炒飯」(ひざかけちゃーはん、表記は様々)となっている。
「覇王の残飯」(道端草食郎)
「人見知り克服養成所」(人見直巳)
「地球最後の手記」(大森子守)
「六畳一間の打上花火」(打田寿々)
「死人の肖像」(手羽素瀬界)
「僕だけの耳長獣」(始島指針)
「傾いた惑星」(桜望梅)
「ベストシーズンライクアドリーム」(秋長夏短)
「鳥類館大脱出」(大橋阿波一郎)
タイトルだけを見ると「一体何を送ったんだ...」と不安になるが、実際は誰かの日常を切り取ったものや、自分で書いた絵の画像などだ。「覇王の残飯」は、道に置かれたフライパンに水が溜まり、自転車と思われるタイヤが映り込んでいる。「死人の肖像」は慌ただしい朝食中に撮ったのだろうか、テーブルの上に皿に載ったトーストやマヨネーズ、メガネが散乱している。
「棒があったら振りたくなるのと同じ」「飽きたらやめます」
凝っているのは表紙だけではない。裏表紙には能登さんが考えた本のあらすじが書き込まれている。
「事故物件だとは聞いていたけれど、まさか掃除すらされてないなんて...。故郷を捨てて逃げてきた青年・山田が安さに惹かれて借りた部屋は、まだ先週人が死んだばかり。『家具家電付きなんてむしろラッキー』と気楽に構えていた山田だったが日々の違和感はゆっくりと折り重なっていく。死者の生活を辿り、行き着いた真相とは?鮮烈な余韻を残す著者の最高傑作」(「死人の肖像」より)
これを見たユーザーからは、「どこで買えますか?(知ってて聞いている)」、「真相が知りたい」といった出版を待ち望む声が寄せられている。
能登さんは「ない本」の活動を趣味でやっているといい、「棒があったら振りたくなるのと同じ気持ち」と表現した。いつまで続けるかは特に決めておらず、「飽きたらやめます!」とのことだ。表紙カバーは光沢紙を使用し、自宅のプリンターで印刷している。
「ない本」アカウントのフォロワー数は、10日15時現在で3万人を超えている。5日にツイートした「リプライで送られてきた画像で『ない本』を作ります」との投稿には400件以上のコメント(該当外のコメント含)が付いている。9日には「フォロー返ししていたらアカウントが2回ロックされたので全てのフォローを外しました」と投稿、もはや趣味の範疇を超えていると思われるが、活動は継続するようだ。