16歳で自殺したアイドルグループ「愛の葉(えのは)Girls」の大本萌景(ほのか)さんが強いられていた過酷な労働実態について、タレントの長嶋一茂さんは2018年10月12日の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、「搾取なんだけど、そういう世界でもある」と見解を述べた。
萌景さんは、1か月に20日間前後の労働、1日平均12時間の拘束という中で、平均報酬は月額3万5000円だったという。異常な数字だが、芸能界に身を置く一茂さんは「実はそんなにビックリしていない」と語る。
「芸能界にお世話になっている」
萌景さんの母・幸栄さん、姉・可穂さんは11日に会見を開き、自殺に至る経緯を明かした。それによると、萌景さんは学業と両立できない過密スケジュールを組まされ、所属事務所「hプロジェクト」に次回の契約更新はしない意思を伝えた。だが、佐々木貴浩社長から出てきた言葉は「違約金1億円払え」(佐々木氏本人は発言の事実を否定)。萌景さんは、その翌日となる3月21日に命を絶った。この会見から一夜明けた10月12日、幸栄さんら遺族は事務所などに対し、約9200万円の損害賠償を請求する民事訴訟を松山地裁に起こした。
膨大な仕事量を強要されていた萌景さんは、報酬も過少だった。だが、一茂さんは「モーニングショー」で「あり得ない報酬だけど、僕は実はそんなにビックリしていない」と冷静だった。
「搾取なんだけど、そういう世界でもあるな、若手芸人の話とか聞くと。普通じゃないでしょう。そういう世界(芸能界)の通例みたいな感覚がある。僕が麻痺しているのかも分からないけど」
テレビ朝日解説委員の玉川徹氏は番組で、「一茂さんは『芸能界ではあることだ』と言いましたけど、だとすれば芸能界が異常な世界。日本全国の芸能界でこうした状況があるとすれば芸能界がおかしい。そんな話をここに適用してはいけない」と猛反論。一茂さんは「僕もその通りだと思う」と応じる素振りを見せたものの、
「あまり声を大きくしては言えないけど。芸能界にお世話になっているから」
と奥歯に物が挟まったような言い方だった。
こうした一茂さんの意見に対しては、ツイッター上で、
「一茂それ言ったらダメなやつだよ」
「芸能界では普通みたいなことを言ってるが、そんなことないだろう」
「常識人ハズレしている感覚だね。TVに出て発言する人じゃない」
といった声があがり、理解を得られているとは言い難い。
一方、「芸能界にお世話になっている」からこそ思うところがあるのか、一茂さんが事務所のやり方に強く異を唱える場面もあった。
「俺が親だったら事務所に怒鳴り込みます」
愛媛のご当地アイドルグループとして、地元の農作物のPRや販売に携わっていた「愛の葉Girls」の中で、萌景さんは抜群に売り上げの高いメンバーだったといい、リーダーにも抜擢されるエース格だった。その分、萌景さんの仕事量も増えていったという。
一茂さんは、「萌景さんが夢や希望をもってアイドルになったというのは、能動的に自分の道を選択しているからそこはもちろん良い」とする一方、「未成年者に稼がせている大人がいるわけだよ」と事務所の体制に目を向けた。
「萌景さんが売上を伸ばしている。萌景さんを出せば、事務所の売り上げも高くなる。未成年者の彼女に対し、事務所側の大人たちがどういうセーフティネットを張っていくか、考えないといけない。
体はひとつしかない。1日は24時間しかない。その中で、過酷な労働でも本人は望んでやっていたところもあったと思う。でも、判断能力という点では未成年者なんですよ。大人がちゃんと考えてやるべきと思う」
また、「報酬3万5000円でも続けていたのは、彼女に夢や希望があったからだと思う。ただ、事務所側が彼女を商品化し、おんぶにだっこになっている。それは大人として、人間としてどうなのか」とも訴えている。
仕事のたびに出欠の意思を事務所に伝えることになっていた他のメンバーと違い、「稼ぎ頭」の萌景さんは出欠の自由がなく、大半の仕事に強制参加だったという。一方、事務所との契約には、活動に関する情報の口外を禁ずる「口外禁止条項」がつけられ、悩みがあっても親にも相談できなかった可能性があるとされる。
一茂さんは、「彼女が元気だったころに、この情報(編注:出欠の自由がないこと)が果たして親に知られていたのかな。もし俺が親だったら、冗談じゃないと言って事務所に怒鳴り込みますよ」と憤った。
こうした主張にツイッター上では「長島一茂さん言ってること正論だな」「同意だわ。大人は何してんだって話」といった声や、「完全に『父親の意見』だったね」との声もあがった。