2018年7月に成立したカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法をめぐり、新たな火種が浮上しそうだ。
安倍晋三首相は国会審議で、トランプ大統領との間で「米国の企業からの要望等に関する会話をしたことは一切ない」と答弁していた。だが、米国の調査報道サイト「プロパブリカ」は10月10日(現地時間)、トランプ氏の大口寄付者が経営するカジノ企業「ラスベガス・サンズ」について、日本参入を認めるようにトランプ氏が安倍氏に迫ったと報じた。仮にこの報道が正しいとなれば、国会答弁との整合性が問われることになりそうだ。
「安倍氏は特に反応せず、情報に感謝する、と述べた」
プロパブリカによると、トランプ氏からの働きかけがあったとされるのは安倍氏が訪米した2017年2月。「会談について把握している2人の人物」の話として報じた。
シンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」などを経営する「ラスベガス・サンズ」のシェルドン・アデルソン会長はトランプ氏の大口寄付者として知られる。米フロリダ州・パームビーチにあるトランプ氏所有のリゾート施設「マー・ア・ラゴ」で2月11日、「トランプ氏がアデスソン氏のカジノ案件について安倍氏に提起」したというのだ。この発言は突然で、
「日本側は驚いた」
「彼(トランプ氏)が余りにも厚かましく、彼ら(日本側)は少し疑わしそうにしていた」
などと日本側の反応を伝えている。トランプ氏は安倍氏に対して、ラスベガス・サンズに認可を与えるように強く求めたが、「安倍氏は特に反応せず、情報に感謝する、と述べた」という。
トランプ氏の発言は「長年にわたる規範に反する」
このやり取りについて、プロパブリカは
「大統領が最大献金者の個人的ビジネスの利害に直接結びつく事柄を外国首脳に提起するのは、長年にわたる規範に反する」
としてトランプ氏を批判。批判は安倍氏にも及びそうだ。アデルソン氏とトランプ氏のつながりは、過去の国会審議でも問題になってきたからだ。
18年7月6日の参院本会議で立憲民主党の杉尾秀哉氏が
「カジノ産業を有力スポンサーにするトランプ大統領との間に密約でもあるのか」
と質したのに対して、安倍氏は
「トランプ大統領との間において、米国の企業からの要望等に関する会話をしたことは一切ない」
と答弁。プロパブリカでは、この答弁を念頭に
「安倍氏は7月に国会議員の前で行った答弁で、トランプ氏がカジノ会社からの要望を伝えたことを否定したが、話題が出たことは否定しなかった」
と指摘している。
菅義偉官房長官は10月11日午後の記者会見で、今回の報道をしたプロパブリカが著名な調査報道サイトであることを指摘され、
「どのような方が書かれたか知りませんけれども、総理が国会で述べられたとおり」
と述べるにとどめた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)