「過去最大の赤字」でも「高値」更新 リコーへ期待が集まった理由

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   リコーの株価がこのところ、年初来高値を相次いで更新している。精密機械業界で、市場が縮小している事務機の割合が高いリコーの株価は軟調な展開が続いていた。

   しかし新興国経済への不安などから投資家の関心が日本株に向かう中、リストラ効果などが評価され、見直し買いが入っている。事務機を扱うコニカミノルタや富士フイルムホールディングス(HD)なども株価を上げている。

  • リコー株価が年初来高値を更新しづつけている
    リコー株価が年初来高値を更新しづつけている
  • リコー株価が年初来高値を更新しづつけている

V字回復する予想

   リコーの株価は2018年9月27日、一時前日終値比4.8%(57円)高の1257円まで上昇し、2月5日につけた年初来高値を8か月近くぶりに更新した。株価の水準は15年12月以来、約2年9か月ぶりの高さ。さしたる新しい材料はなかったが、基調として業績が見直される中で、買いが買いを呼ぶ相場となっている。さらに10月2日、5日にも年初来高値を更新した。

   リコーの業績は、2018年3月期は純損益が1353億円の赤字(前期は34億円の黒字)で、赤字額は過去最大となった。ただ、赤字は不振の続く北米子会社の減損処理や、人員削減といった構造改革が大きな要因。19年3月期については、固定費削減などのリストラ効果があらわれることなどを踏まえ、純損益は470億円の黒字にV字回復する予想を出している。

   リコー株が買われる素地は過去数か月のアナリストの評価が生み出してもいた。18年7月3日にゴールドマンサックス証券が820円から1000円に目標株価を引き上げ、社のスタンスを「売り」から「中立」に格上げしたのに続き、SMBC日興証券が8月23日に1000円から1200円に、モルガン・スタンレーMUFG証券は9月21日に1000円から1300円に目標株価をそれぞれ引き上げた。SMBC日興証券は引き上げの際のレポートで「従来の想定以上に体質転換が進みつつあることは評価すべき局面」としたうえで、「事業売却を含めた構造改革を進めることで1000億円程度のフリーキャッシュフローの改善が見込まれる。今後はその活用力に注目したい」と期待した。

「勇気ある撤退を含めた経営判断」求める声

   ところで、事務機は世界シェアトップのリコーをはじめ、日本勢の独壇場。デジタルカメラを含めた精密機械は、日本人のものづくりの底力が今なお生きている業界だ。リストラ効果などを期待する見直し買いはコニカミノルタ、富士フイルムHDなどにも及び、株価を上げている。コニカミノルタは10月1日、富士フイルムHDは10月4日にそれぞれ年初来高値を更新した。コニカミノルタは9月27日に経営説明会を開催した。営業利益見通しを据え置くなど従来の経営計画に大きな変更はなかったものの、複写機などの利益目標を引き上げたことが好感されている。

   もっとも、オフィスのペーパーレス化は世界で今後も進むとみられており、いくら独壇場とはいえ、日本勢10社程度がひしめく状況が持続可能ではないとの見方は根強い。大胆に固定費を削減し、デジタルサービスなど新たな分野に注力するためにも「勇気ある撤退を含めた経営判断」(国内系証券アナリスト)を求める声が出ている。

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