井上尚弥「強すぎる」ゆえの悩み 200年に一人の天才、最大の敵とは

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   ボクシングのWBA世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)が2018年10月7日、「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)」バンタム級トーナメント1回戦に出場し、元WBA世界同級スーパー王者フアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を初回1分10秒KO勝ちし、準決勝進出を決めた。

   わずか2発のパンチで元世界王者をキャンバスに沈めた。立ち上がり、サウスポーのパヤノの動きをうかがいながら、その時を待っていた。パヤノが右ジャブを伸ばしたところを井上は電光石火のワンツー。強烈な右で顎を撃ち抜かれ、頭部をキャンバスに打ちつけたパヤノは、半ば失神状態だった。

   見えなかった右。70秒の早業に、会場はすぐに反応出来なかった。テレビでもスローモーションでしか確認出来ないほどの速さだった。

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「見えない右」の正体

   リング上では何が起きていたのか。右構えの井上に対してパヤノはサウスポーで、相撲でいえば喧嘩四つである。井上は左、パヤノは右と、互いのジャブを放つ腕が真正面で相対する。喧嘩四つの場合、ジャブはあくまでもけん制として使い、互いの利き腕から放たれるパンチが勝負を握る。

   井上のフィニッシュブローは、これに世界最上級のテクニックがまぶされたものだった。左ジャブで相手の視界を遮った次の瞬間、右を打ち込んだ。おそらくパヤノの最後の記憶は、井上の左ジャブだったに違いない。これが見えない右の正体だ。

   井上の師匠である大橋会長は、元WBA、WBC世界ミニマム級王者で150年に一人のボクサーと言われた。その師匠は井上を「200年に一人のボクサー」と称する。

   辰吉丈一郎氏の記録を更新するプロ6戦目(当時=現在は5戦目)での世界王座獲得。当時世界最速だったプロ8戦目での世界2階級制覇、そして日本人最速となる16戦目で世界3階級制覇。この記録だけでも日本史上最高のボクサーといっても過言ではないだろう。

   一方で、ボクシングはかつて国民的ヒーローを生み出したスポーツである。日本人初の世界王者となった白井義男氏は敗戦後の日本に明るい希望を与えた。ファイティング原田氏の猛ラッシュに国民が沸き、輪島功一氏の不屈の闘志は大きな感動を呼んだ。日本最多の13度の世界王座防衛記録を持つ具志堅用高氏、浪速のジョーこと辰吉丈一郎氏。歴史にも記憶にも残る王者らと比較すると、200年に一人の天才ボクサーはまだその域に達していない感がある。

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