スズキが中国での自動車生産から手を引く。中国の重慶長安汽車との合弁会社「重慶長安鈴木汽車(長安スズキ)」にスズキは50%出資するが、年内をめどに全てを重慶長安に譲渡するのだ。長安スズキは重慶長安の子会社として存続、スズキが重慶長安にライセンス供与する形で、当面はスズキのマークが付いた小型車の生産を継続する。
スズキは重慶長安と1993年9月に長安スズキを設立。95年5月から小型車「アルト」などを生産していたが、2011年の約22万台をピークに、17年は約7万6000台にまで落ち込んでいた。
多くの日本メーカーは中国を今後の重要市場と位置付け
スズキは2018年6月に、中国の別の合弁会社「江西昌河鈴木汽車」への出資分(46%)も全て合弁相手の昌河汽車に譲渡している。二輪車については中国での合弁事業を続けるが、今回の決定で、今や世界最大の自動車市場となった中国での四輪車の生産から全面的に退くことになる。
多くの日本メーカーは中国を今後の重要市場と位置付け、生産・販売を強化している。日産自動車はスポーツ用多目的車(SUV)の「エクストレイル」がヒットするなど好調で、現在年産170万台の中国での生産能力を2022年には260万台に高める方針。トヨタも広州に新工場を作り、生産能力を35%ほど増やして170万台にする計画といった具合だ。
スズキも、中国を重視したからこその進出だった。スズキといえば小型車。その製造ノウハウを活かして中国市場に、手頃な価格の車を売り込もうとしてきた。しかし、近年は所得の上昇などでSUVをはじめとする大型車が人気を集めるようになった。スズキも小型SUV「ビターラ」や「Sクロス」などを生産して立て直しを図ったが、低迷から脱することはできなかった。
大型車人気に加え、スズキに「誤算」だったのは、中国で進む電気自動車(EV)化の流れだ。中国は2019年に、新車販売の一定割合を、EVなどの「新エネルギー車」にするよう義務づける予定。EVのラインアップを持たないスズキの撤退の背景には規制への対応が難しいこともあるとみられる。インドで車両の相互供給を行うトヨタ自動車との連携で、EV規制に対応するのではないかとの観測もあったが、その道は選択しなかった。