自動車めぐる「大幅減税」論 財務省はどう動く?

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   自動車の取得や保有に関わる税金が、年末に決める2019年度税制改正の焦点に浮上している。19年10月の消費税率引き上げをにらみ自動車業界が税の軽減を強く求めており、税制論議を仕切る自民党税制調査会の宮沢洋一会長も検討を明言している。ただ、財務省、総務省は税収減になる事態は避ける考えで、調整は難航しそうだ。

   自動車メーカーでつくる日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は18年9月20日に会見し、大幅な減税要望を発表した。

  • 自動車税減税の求めに対し、財務省はどう動くか
    自動車税減税の求めに対し、財務省はどう動くか
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消費税引き上げをにらみ

   なぜ今自動車税減税なのか。

   自動車には取得・保有・走行の各段階で計9種類もの税金が課される。まず、購入する段階で、(1)消費税とともに(2)自動車取得税(都道府県税)がかかる。所有していると、(3)自動車税(同)または(4)軽自動車税(市町村税)が毎年かかる。さらに、新規登録や車検時に(5)自動車重量税(国税)を納めなければならない。さらに、車を使う際にはガソリンにかかる(6)揮発油税(国税)、(7)地方揮発油税(地方税)、軽油の(8)軽油引取税(軽油)またはLPG(プロパンガス)の(9)石油ガス税(国税)がかかり、(1)消費税もが課される。

   これら9税のうち、取得税は2019年3月31日まで、エコカー減税(環境対応車普及促進税制)によって免税や軽減措置がある。税率は取得価格の3%(軽は2%)だが、19年10月の消費税率10%へのアップ時に「環境性能割」という形に衣替えし、燃費に応じて0~3%(軽は0~2%)になることが決まっている。

   重量税は同年4月30日まで免税や軽減措置があり、免税の車両に関しては新車購入時から3年後の初回車検時にも免税が適用される。

   自動車税と軽自動車税は排気量に応じて課税され、普通乗用車は年2万9500~3万9500円、軽は一律1万800円。環境性能の優れた車への税の軽減もある。

   自工会は、消費税率引き上げによる販売の落ち込み対策として取得税の軽減を求めるほか、今回、特に強く主張しているのが保有にかかる自動車税・軽自動車税の引き下げだ。そこには、そもそも自動車にかかる税金が欧米より高すぎるという不満があり、自動車税の「軽自動車並み」が一つの目安とされる。軽自動車の1万800円を基準に排気量1000ccの小型車の自動車税を計算すると1万6400円と、現行より1万円あまり下がり、新車価格100万円とすると、消費税2%増税分を2年で取り返せる計算になる。

「大きな変化の時代」迎えている自動車業界

   自工会が必死に訴えるのは、消費税率アップの反動減への強い危機感からだ。トヨタ会長は先の会見で、「市場影響見通しで約30万台減、経済効果で約2兆円のマイナス、雇用で9万人減と予想される」と指摘した。シンクタンクの試算を基にしたもので、1997年と2014年、消費税率が、それぞれ5%、7%に引き上げられた際には市場に40万~80万台減の影響があったとされている。

   ただし、問題は自動車税が地方税の有力な税目ということだ。税金が割安な軽を少し増税し、普通車は減税し、差し引き税収中立(税収が変わらない)にするという理屈もあるが、これは、軽が特に地方で生活を支える「足」として不可欠なため、増税は考えにくい。そこで、普通車を減税すれば、地方税収に大穴があくというわけだ。現在の自動車税の年間税収は1兆5000億円ほどあり、「軽並み」に下げると1000億円単位で税収減になるという。

   取得税については、税収規模が1600億円にとどまり、消費税率引き上げ対策として一定の軽減は可能との声が政府内にもあり、1年限り、ゼロにする案まで聞こえてくる。

   しかし、自動車税は毎年の税収に響くだけに、宮沢・自民党税調会長も「財源なしにできる話ではない」と言明している。ガソリン1リットル1円、揮発油税を上げれば500億円の税収が得られるとして、代替財源とする声もあるが、これには石油業界の猛反対は必至だ。

   自動車業界の危機感の背景には、単発の消費税率引き上げ対策というだけでなく、構造的な問題もある。車の電動化、自動運転の開発、カーシェアの拡大、さらに若者の車離れなど、自動車業界は大きな変化の時代を迎えている。自動車業界の動向は物流を含め国民生活への影響も大きい。他方、自動車をめぐる状況変化は税制だけでどうこうできるものでもない。

   複雑な要素が絡みあい、関係者の利害が錯綜するだけに、年末の与党税制改正大綱の決定に向け、与党、財務・総務両省、業界を巻き込んだ厳しい議論になりそうだ。

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