自動車めぐる「大幅減税」論 財務省はどう動く?

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「大きな変化の時代」迎えている自動車業界

   自工会が必死に訴えるのは、消費税率アップの反動減への強い危機感からだ。トヨタ会長は先の会見で、「市場影響見通しで約30万台減、経済効果で約2兆円のマイナス、雇用で9万人減と予想される」と指摘した。シンクタンクの試算を基にしたもので、1997年と2014年、消費税率が、それぞれ5%、7%に引き上げられた際には市場に40万~80万台減の影響があったとされている。

   ただし、問題は自動車税が地方税の有力な税目ということだ。税金が割安な軽を少し増税し、普通車は減税し、差し引き税収中立(税収が変わらない)にするという理屈もあるが、これは、軽が特に地方で生活を支える「足」として不可欠なため、増税は考えにくい。そこで、普通車を減税すれば、地方税収に大穴があくというわけだ。現在の自動車税の年間税収は1兆5000億円ほどあり、「軽並み」に下げると1000億円単位で税収減になるという。

   取得税については、税収規模が1600億円にとどまり、消費税率引き上げ対策として一定の軽減は可能との声が政府内にもあり、1年限り、ゼロにする案まで聞こえてくる。

   しかし、自動車税は毎年の税収に響くだけに、宮沢・自民党税調会長も「財源なしにできる話ではない」と言明している。ガソリン1リットル1円、揮発油税を上げれば500億円の税収が得られるとして、代替財源とする声もあるが、これには石油業界の猛反対は必至だ。

   自動車業界の危機感の背景には、単発の消費税率引き上げ対策というだけでなく、構造的な問題もある。車の電動化、自動運転の開発、カーシェアの拡大、さらに若者の車離れなど、自動車業界は大きな変化の時代を迎えている。自動車業界の動向は物流を含め国民生活への影響も大きい。他方、自動車をめぐる状況変化は税制だけでどうこうできるものでもない。

   複雑な要素が絡みあい、関係者の利害が錯綜するだけに、年末の与党税制改正大綱の決定に向け、与党、財務・総務両省、業界を巻き込んだ厳しい議論になりそうだ。

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