公益財団法人中山人間科学振興財団 (村上陽一郎代表理事) は2018年 9月23日、今年度の中山賞大賞を大阪大学大学院生命機能研究科の北澤茂教授に贈呈した。
北澤教授は神経学研究者で医師。2013年度から昨年度まで、哲学者や比較認知科学者などが加わる文部科学省科学研究費の新学術領域研究「こころの時間学~現在・過去・未来の起源を求めて」の領域代表者を務めた。
次は時間学に取り組む
この研究成果も含んだ「こころの時間の心理学・生理学的研究」が受賞対象になった。認知症検査で日付が重視されるのは、時間の概念が人特有で生活の基本になっているからという。人の意識は過去、現在、未来に注目、死を恐れる。北澤教授らはこうした「こころの時間」がどこから生まれ、どう成り立っているかを追究した。
「その場所がわかったのが最大の成果でした」と北澤教授。脳の頭頂部の後方内側にある楔前部(けつぜんぶ、せつぜんぶ)と呼ばれる部分だった。何も考えずにぼんやりしている時に活動する場所で、認知症アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドベータが最初に蓄積される場所でもあるという。幸福感の強い人はこの部分が大きいとの研究もあるそうだ。
北澤教授らは脳のさまざまな機能に着目し、その時の脳の働きとその原理の解明に挑戦している。時間感覚の生まれた場所の次は、人工知能などの最新技術を駆使し、時間学に取り組む方針という。
(医療ジャーナリスト・田辺功)