東京都世田谷区の職員から責任を転嫁されギャラから2万円引くなどと言われたと、女性漫画家がツイッター上で告発し、騒ぎになっている。
区が事実関係を調べ、保坂展人区長は、非を認めてツイッター上で謝罪した。
山本さほさん「人のことなんだと思ってんだろう」
告発したのは、「岡崎に捧ぐ」などの作品で知られる漫画家の山本さほさん(33)だ。
「世田谷区役所と仕事したんだけど、やばすぎて笑うしかなかった...。人のことなんだと思ってんだろう」
山本さんは2018年10月1日、こうツイートし、翌2日になって、その内容を自作の漫画で暴露した。
それによると、区役所内で1日、海外の子供たちに漫画を教えるイベントがあり、山本さんは、講師の仕事を引き受けた。ところが、区の担当職員は、山本さんが作って送ったデータを紛失したうえ、山本さんに「え、持って来てないんですか?」と聞いたという。
そして、授業開始前になって、この職員は、区役所と店で会場のダブルブッキングをするミスをして店からの当日連絡で気づいたと告白したが、「そのお店のキャンセル料2万円、山本さんのギャラから出しますね」と発言したという。山本さんは、「えっ、何で?」と抗議したが、職員は、自分も悪いとしながらも、ダブルブッキングを知らなかった山本さんに対し、「ふつう、連絡しません?」と非があると主張したという。
さらに、前言を翻してコピーは自分でするものと難癖を付け、「とにかく、2万円は山本さんにお支払いいただきますので。こうなったのも山本さんに責任があるんですから」と主張を続けた。
世田谷区議らも、事実関係の確認に動く
山本さほさんは、時間がないため子供たちへの授業に出たが、今度は終了後に先の担当職員から、「いやー、先ほどは失礼いたしました。もう大丈夫ですのでギャラはお支払いいたします」と言われた。
不審に思った山本さんは、ダブルブッキングされた漫画喫茶店「まんがの図書館ガリレオ」に行って、店から話を聞くと、山本さんのギャラは元々、区の予算分から店の場所代2万円を引いたものだったことが分かった。店も、朝から貸し切りにして待っていたと困惑していたという。
こうした状況に、山本さんは、「フリーランスの仕事をなんだと思ってるのでしょうか...」と疑問を投げかけている。
その後のツイートでも、子供の画材を買いに行ってほしいと言われ、全員分を自腹で買ったと明かした。買い出しのほか、打ち合わせや資料作成でも時間を取られ、「実働4日」だったそうだ。
山本さんによる告発漫画の投稿は、大きな反響を呼び、10月3日夕現在で7万件以上もリツイートされている。
お笑いコンビ「ゲオルギー」の吉川きっちょむさん(29)も、山本さんと同じイベントに参加したことをツイッターで明かし、「区役所の人の対応が酷すぎて笑うしかなかったなー」とつぶやいた。先の担当職員は、子供たちの前でお金の話をし始めたり声を荒げたりしたため、会場から離れてもらったという。
世田谷区議会でも話題になっているようで、上川あや議員が区と山本さん双方から事情を聴いたことをツイッターで明かしたほか、桃野よしふみ議員も関心を示している。
漫画喫茶「会場が変わった時点で一報ほしかった」
この騒ぎで、保坂展人区長のツイッターにも、聞きただす声が相次ぎ、保坂区長は10月3日、オーストラリアの姉妹都市との交流プログラムで行ったワークショップのイベントについて事実確認をしたとツイッターで発表した。
そこでは、「ダブルブッキングで生じたキャンセル料を謝礼から差し引く等の発言をしたことがわかり、山本さん他関係者に多大なご迷惑をかけた」と謝罪し、担当課長が山本さんに連絡して3日中に会ってお詫びするとした。さらに、「なぜこのような誤った対応をしてしまったのかを調べると共に、同様のことを繰り返すことのないよう厳正に指導いたします」としている。
ダブルブッキング先の「まんがの図書館ガリレオ」は3日、J-CASTニュースの取材に対し、店長が次のように経過を話した。
先の担当職員からは、6月にイベントで店を使いたいと電話があり、当日は、午後からだったが、朝から借り切りにした。1時間1万円で貸しているが、定期的に漫画講座を開いてもらっている関係もあるため、夕方まで2万円と安くしたという。正午前になってこの職員に電話したところ、区役所の会議室でイベントを行うことにしたと説明を受けた。
店長は、「新しく配属された職員の方のようで、こちらも安心して任せきりにした非はあると思います。ただ、会場が会議室に変わった時点で、一報いただければありがたかった」と話す。今回のことについては、キャンセル料の件も含め、区に状況を調べてもらっているところだという。
区「会場予約したかで店と行き違いがあった」
山本さんの告発漫画について、区の国際課は3日夕、「おおむね同様なやり取りがあったと確認しました」と課長が事実関係を認めた。
ギャラから2万円を引くと先の職員が言ったことについては、「お店が山本さんを講師に紹介してきましたので、委託関係があると認識不足で思ったからだと聞いています」と説明する。とはいえ、山本さんに非はないことから、「やり取りの中での発言は不適切でした」とした。職員に不正の意図はなかったというが、厳重注意したことを明らかにした。
イベントは、区ではなく姉妹都市のバンバリー市の事業だとして、当日に山本さんへは約束したギャラをバンバリー市が支払ったという。2万円を差し引いた事実はないとしている。
区は、バンバリー市と店の仲介をしただけだとし、店には使いたい意向も伝えたものの、会場予約したかについて店と行き違いがあったとした。会議室は、7月下旬に押さえたとしており、キャンセル料の件は、区と店で今後確認したいと言っている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)