第4次安倍内閣、初入閣12人組の中で、ある意味注目を集めている人物がいる。文科相に就任した、柴山昌彦氏だ。当選6回、閣僚中最年少の52歳、弁護士などを経て政界入りした経歴の持ち主で、安倍晋三首相と同じ細田派所属である。
その柴山氏だが、就任早々ネットの一部で、3年前のテレビ番組での「同性婚」に関する発言が蒸し返されている。いったいどのような内容だったのか。
TVタックルで同性愛カップルと議論
話題になっているのは、2015年3月5日に放送された「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)の一場面である。
当時、同性カップルへの「パートナー証明書」を、東京都渋谷区が全国で初導入することが話題を呼んでいた。そこで番組では同性婚をめぐる問題について、政界代表として柴山氏をゲストに招いて討論した。
冒頭、柴山氏は、「(自民)党内に色々な見解はあると思いますけども」と前置きしたうえで、カップルの「要件」をどう決めるかなど、「私に関して言えば、まだ議論が熟していない(と思う)」と、パートナーシップ制度も含めて、慎重論を表明する。自分の周囲にも同性愛をカミングアウトしている人もいるとして、
「差別をすることはこれからなくしていかなければいけない、と思いますけど、それとこれ(同性婚)を法的に認知する、ということはちょっと違う話だと思います」
これに、同性愛カップル側の代表として出演していたLGBT活動家の増原裕子さんが、パートナーシップはあくまで自治体としての動きで、婚姻制度全体に関わるものではないのでは、と反論する。対して柴山氏は、「家族制度ってやっぱり全国的に議論するものじゃないか。そうしないと、それこそ渋谷にそういう人(同性愛者)たちが集中するとか」と懸念を示すが、これにやはりLGBT活動家の東小雪さんが、「渋谷に同性愛者がたくさん住んでいたら、どんな問題があると思いますか?」。柴山氏は少し言葉に困った様子で、
「問題があるというよりも......まあ、やっぱりそこに、社会的混乱というのは生じるんじゃないですかね」
「少子化時代にマッチするか」議論を主張
紛糾したのは、そもそも結婚制度とは何か、という話題に差し掛かった時だ。弁護士の本村健太郎氏が、結婚の目的として考えられるのは「繁殖」と「貞操義務」だが、しかし現に男女であっても子どものない夫婦もいることも考えれば、「結婚の本質は『貞操義務』である」とみるべきだ、と指摘する。これに乗る形で、元宮崎県知事の東国原英夫氏が、もし「繁殖」=少子化対策が目的なら一夫多妻という話になる、と極論をぶち、司会のビートたけしさんも「コンドームに税金をかけろ」とボケる。
そんな中に、柴山氏が「だから、逆に言えば――」と口をはさんだ。
「同性婚が自由にできたときに、本当にこの少子化時代にマッチするのかどうか、ということも議論は......」
この発言に、共演者たちがざわついた。女装家のミッツ・マングローブさんが「少子化関係ない! そしたら、高齢者同士の結婚なんて、全然その範囲の外になっちゃう」といえば、俳優の大竹まことさんも「少子化を防ごうとして(同性婚反対を)言ってるわけ?」と質問を投げる。柴山氏は「いやいや、そんなことはないですよ」と否定しつつ、
「同性婚をね、制度化したときに、少子化に拍車がかかるんじゃないか、ということを......」
「そういうことじゃないんです。違う違う違う違う」
これに東さんは落ち着いた口調で、自分は同性婚が認められないからという理由で、「異性愛者になって子どもを産もうとは思わない。それは異性愛の人が同性愛になれないのと同じ」とした上で、「少子化の問題と同性婚の問題というのは分けて考えた方がいいかなと思います」。
さらにエッセイストの阿川佐和子さんからは、柴山氏の発想は同性愛者に限らず、子どもを持たない夫婦なども「国民として国の役に立たない人間は認めない、って話じゃないですか」という批判も飛ぶ。「そういうことじゃないんです。違う違う違う違う」と柴山氏は抗弁を試みるが、飛び交う出演者たちの意見に、結局それ以上「真意」を説明することができないまま、番組は次の話題に移ってしまった。
放送後、この発言はツイッターなどSNSで議論を呼んだほか、「Buzzap!」などの一部ネットニュースでも取り上げられた。特に当時、柴山氏が自民党で「ヘイトスピーチ対策PT座長代理」の任にあったことも、批判に拍車をかけた。
柴山氏は当時、自身のツイッターで、
「社会規範のあり方や、他者への尊重を考える貴重な機会でした」
と述べつつ、「同性婚が少子化を助長する、という論には科学的な証明がない」といった一般ユーザーからのリプライに対しては、
「科学的に証明されてないことは当然知ってますが、制度化により全く影響がないとも言えていません」
と反論、また、擁護の声に対して、
「ありがとうございます。不利にしないようにすることと、正面から認めることの間にはやはりギャップがあります」
とも述べていた。