ヤマトホールディングス(HD)の株価が上昇している。2018年9月下旬には2日連続で年初来高値を更新。何かと不祥事が絶えず、コンプライアンス(企業統治)に不安を抱える会社ではあるが、通信販売が右肩上がりの成長を続ける日本にあって宅配便シェア4割超という「必要不可欠さ」などから、有望内需株として見直し買いが入っているようだ。
ヤマトの直近の不祥事は7月下旬に明らかになった、法人向け引っ越しサービスを担う子会社「ヤマトホームコンビニエンス(YHC)」(東京都中央区)による代金過大請求問題だ。相次ぐ報道を受け、社外の弁護士らで構成する第三者委員会を立ち上げて調査し、8月31日にその報告書を公表した。
法人引っ越しめぐり課題請求
それによると、法人への過大請求額は、伝票からさかのぼれる2016年5月~18年6月の2年2か月間で約17億円。そのうち、悪意で上乗せ見積もりしたものは16%と推計。過去5年間の過大請求額は約31億円とした。第三者委は「(詳細な金額の裏をとれていないが)2010年ごろから徐々に始まり、全国的に増えていった」と分析。外部や内部から通報があったにもかかわらず、重大な不備の発見と抜本的な改善ができていなかったことも明らかにし、「YHCにおいて組織体制に重大な不備があった」と指摘した。
第三者委の報告書を受けてヤマトHDは8月31日、個人も含めたすべての引っ越しサービスの新規受注を中止すると発表した。期間は未定だが、「商品の再設計や約款順守の徹底が完了するまで」とした。
こんなことが起きれば株価は暴落しそうだが、そうでもなかった。発表を受けた取引初日の9月3日は朝方に前週末終値比74円(20.2%)安の3230円まで下げたものの、これを底値に徐々に上昇、終値は35円(1.1%)安の3269円だった。
「働き方改革」報道に好感
その後の株価は一進一退の状況だったが、9月12日付日本経済新聞朝刊で「郵便配達、平日のみ 土曜休業」と報じられると、土日配達を実施するヤマトの優位性が高まるとの思惑から12日の終値は3332円となり、引っ越し子会社YHCによる不祥事の詳細発表直前の8月31日以来の水準を回復した。9月14日にはYHCの過大請求問題を受け、2018年4~6月期の純利益を26億円と7月の発表時(40億円)から下方修正した。しかし翌営業日の18日の株価はむしろ悪材料出尽くし感から上昇し、終値は21円(0.6%)高の3307円だった。
さらに、9月19日付日経新聞朝刊「ヤマト、週3日勤務可能に」といった前向きな働き方改革の報道もあって株価は上昇基調となり、9月26日に一時3536円をつけて3か月ぶりに年初来高値を更新すると、翌27日もさらに上値を追って3559円まで上昇した。2017年の残業代未払いに続くYHCの不祥事発覚にもかかわらず、成長が見込まれる宅配便で高シェアを保つヤマトHDは投資家には魅力的であるようだ。