エンゼルスの大谷翔平投手が2018年10月1日(日本時間2日)、米ロサンゼルス市内の病院で右肘の靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた。MLB公式サイトが速報で伝えたもので、エンゼルスのビリー・エプラーGMによると手術は成功したという。
手術を受けたことにより、2019年は打者に専念することになる。エプラーGMは復帰の時期に関して「今すぐ判断することは難しい」としているが、送球プログラムのリハビリを必要としないDHならば、半年での復帰が見込まれ、計算上では2019年3月28日(日本時間29日)の開幕戦に間に合う。
今季の打者大谷の成績からすれば、開幕から大谷を起用したいというのが球団の本音だろう。チームの成績はもちろん、興行面においてもドル箱選手の大谷が試合に出場すれば多額の収益を見込める。
復帰の時期に関しては、大谷と球団との話し合いで最終的に決定されるが、ここでの判断を誤れば2020年以降、期待される二刀流が見られなくなる可能性もある。
完全復帰には1年かかる 元巨人選手が証言
2018年9月27日放送の「ZIP!」(日本テレビ系)で元巨人外野手の鈴木尚広氏が、自身の経験を踏まえてコメントしている。
2000年に右肘の靭帯を損傷し、トミー・ジョン手術を受けた鈴木氏は「外野でバックホームする時に肘に激しい痛みがあった。風呂も寝る時も気を配って生活した。100%戻るまで1年以上かかりました」と完全復帰まで1年間を要した事実を吐露した。
打者大谷の起用法を球団は明言していないが、今季と同じくDHでの起用が見込まれる。ただ、このDH起用を巡っては球団も頭を悩ませている。
これまでエンゼルスのDHは、メジャー屈指の強打者であるアルバート・プホルスの定位置だった。しかし、大谷の加入によりプホルスはファーストにコンバート。来季も同様のシフトが組まれることが見込まれる。
来季、ファーストを任されるであろうプホルスの守備力には大きな不安が付きまとう。左膝に爆弾を抱える38歳のプホルスは2018年8月に左膝の手術を受け、現在リハビリ中である。高齢に加え左膝の故障。内野手として多くを望めない状態にある。
球団としてはプホルスを起用せざる得ない事情がある。エンゼルスは2011年にプホルスと10年、2億8000万ドルの大型契約を結んだ。契約はあと3年残っているため、球団はプホルスを使い続けて年間30億円近い金を回収しなければならない。
そのため、球団としてはプホルスをファーストで起用するのは得策ではない。DHで打撃に専念させ、できるだけ長く使い続けることが結果、球団の利益となる。大谷が打者に専念する来季はファーストの守備につく機会が格段に増えるだろう。左膝に爆弾を抱えるプホルスをファーストで使い続けるのか。それとも大谷を野手にコンバートするのか。球団は選択を迫られる。
カギ握る次期監督の人事
大谷の二刀流を容認し、良き理解者であったマイク・ソーシア監督が今季限りで退任することになった。指揮官が変わることで来季以降の大谷の起用法に影響を及ぼす可能性は大きい。
地元紙の報道によると、次期監督候補の有力候補として次の4人が挙がっている。ブラッド・オースムス(エプラーGM特別補佐)、エリック・チャベス(エプラーGM特別補佐)、ジョシュ・ポール(エンゼルス・ベンチコーチ)、ディノ・エベル(エンゼルス三塁コーチ)。いずれも現エンゼルス内の関係者で占められるが、記事には外部からの招へいの可能性も示唆している。
エプラーGMは以前、ヤンキースのフロントを務めていたことから、ヤンキースの関係者を監督に招へいする可能性があるというもので、外部から監督を招いた場合、ソーシア監督の「意志」が引き継がれるのかは疑問が残る。
来季は打者に専念することになった大谷。その復帰時期を含めて、起用法など球団が匙加減を誤れば、大谷の二刀流を潰しかねない。