「えっ、山口県?!」――逮捕の一報に、驚きが広がった。
2018年9月29日夜、樋田淳也容疑者が逃走49日目にして逮捕された。「地元で知人にかくまわれているのでは」「東京に脱出したのかも」――この1カ月半、さまざまな予測が、世間をにぎわせてきたが、見つかったのは山口県周南市だった。警察もマスコミも、まんまと裏をかかれた格好だ。
「地元」にこだわった警察だが...
大阪・富田林署から、樋田容疑者が逃走したのは8月12日のことだ。直後はひったくりなどを働きながら大阪周辺に出没したが、14日に防犯カメラがその姿を捉えたのを最後に、ぷっつりと消息を絶ってしまった。
それでも警察は、容疑者が引き続き大阪周辺に潜伏している、との疑いを強く持っていた。樋田容疑者は大阪府松原市出身であり、潜むなら土地勘のある地元とにらんだのである。さらに逃走序盤、友人に助けを求める手紙を残したことも、「知人にかくまわれている」との見方を助長した。
逃走から1カ月、9月12日付の毎日新聞(ウェブ版)記事では、この時点でも大阪府警が「知人らを頼って潜伏している可能性」を最有力視し、交友関係を中心に捜査していることが報じられている。
だが、手掛かりは得られぬまま。そんな中で注目されたのが、東京などへの「高飛び」説である。25日の「ビビット」(TBS系)は、東京方面にも知人がいるという証言を取り上げ、大阪脱出の可能性を指摘した。捜査の行き詰まりとともに「高飛び」に触れるメディアは増え、「東北」(日刊ゲンダイ)、「新宿二丁目」(週刊実話)のような奇説も飛び出した。
早々に大阪を脱出していたか
だが真実の逃走ルート「四国→中国地方」は、どこもほぼノーマークだった。
報道によれば、樋田容疑者が愛媛県内で、同行者となった男性と出会ったのは3週間前だという。大阪から愛媛までは直線距離でも250キロ以上になる。その旅程も勘定に入れれば、遅くとも9月の早い時期には大阪を離れていたことになる。府警が交友関係を中心に、懸命の捜査を続けていた時期だ。
その後、男性とともに旅を続け、山口県周南市で万引きを働いたところで御用に。警察が威信をかけて探し続けた脱走犯を捕らえたのは、道の駅の警備員だった。