「あれは私が笑いを取ったんだ」
最も大きな笑いが起きたのは同氏のこの発言に対してであって、笑いとともに拍手もわき起こった。あまりに呆れた時、笑いが起きるものだと主張する人もいるが、いつものよく言えば茶目っ気のあるトランプ節に思わず笑ったという感じで、どちらかといえば和やかな印象を受けた。
日本のテレビ局でも、「トランプが笑い者になった」と、動画を編集して最後の笑いだけを紹介しているものを見たが、ニュアンスはかなり変わってくる。
のちにトランプ氏は、こうした報道を「フェイクニュースだ」と非難。「彼らは私を笑ったのではなく、私と一緒に笑った。あれは私が笑いを取ったんだ」と語ると、「反応を予想していなかったと言いながら、笑いを取ったとはどういうことか。また得意のウソか」と批判が強まった。
しかし、トランプ氏が2度目の笑いについて触れているのであれば、「一緒に笑った」というのは間違いではない。
逆に会場にいた各国代表のマナーを批判するのは、ミネソタ州に住むアンドリュー(70代)だ。
「一国の代表に対して、最初の反応は失礼極まりないよ。でもそれをトランプは冷静に、じつに品のある大人の対応でかわして楽しい笑いに変えた。演説の内容も焦点が定まり、力強く、素晴らしかった。雇用、株式市場、外交政策、北朝鮮問題と、トランプは精力的に成果を出している。愛国心は当たり前のことだ。あれだけはっきり言いたいことを言えるトランプを、各国の代表はじつは羨ましいと思っているのかもしれない」
演説の場にいた米国連大使のニッキー・ヘイリー氏は、「会場の笑いはトランプ氏をバカにしているからではなく、彼の正直で外交的でないところがおもしろいと思ったから」と、FOXニュースのインタビューで答えている。(随時掲載)
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。