あなたは、「ザリガニ」を食べたことがあるだろうか。記者は先日、初めて口にする機会があった。エビと似ているがまた違い、思ったよりは臭みもない。なかなかの珍味である。
どこで食べたかというと――「吉野家」だ。
と言っても、日本の吉野家ではない。中国・深センの店舗である。実は吉野家は年々、海外での展開を広げ続けている。その規模は、近い将来に国内を越える可能性も。その拡大を支えているのが、各地独自のオリジナルメニューである。
中国で巻き起こる「ザリガニブーム」
2018年8月。中国最大のIT都市・深セン。旅先の街角で、お馴染みのオレンジの看板を見つけた。
「へ~、こんなところにも吉野家が......」
何気なく近づいてみて驚いた。メニューを張り出したポスターに、カタカナで「ザリガニ」の4文字が躍っていたからだ。
実は中国では近年、「ザリガニ」料理ブームが巻き起こっている。食べられるのは、日本でもおなじみのアメリカザリガニだ。日本人の感覚では「ゲテモノ」という印象が強いが、もともと米国などでは一般的な食材である。中国には日本経由で持ち込まれたともいわれ、今やその養殖は一大産業だ。ここ最近、「小龍蝦(小さいイセエビ/ロブスターの意)」の呼び名で本格的に売り出され、人気食材の座をつかんだ。
翌日、お店を再訪し、件の「ザリガニ丼」を頼むことにした。お重入りで、小エビほどのサイズに調理されたザリガニ肉が、トウモロコシとともにピリ辛に仕立てられている。お値段は36元(約600円)、近所の相場からすればやや高級路線だ。
口に運んでみる。肉の味は、割合に淡泊だ。食感も、エビのような弾力はない。シャコあたりが近いが、日本人の舌にはちょっと味わいが物足りない。だがそれがかえって、こちらの麻辣な調理法にはしっくり来る。臭みも、この味付けなら気にならない。米の飯ともしっかり合う。ゲテモノなんてとんでもない。日本の吉野家に並んでも、人気メニューになりそうだ(もちろん、抵抗はあるだろうが......)。