「日本でそんな話があれば、ネットユーザーが大反発でしょうね。『脱原発』や『共謀罪』どころではない、大規模なデモが起こりかねません」――そう苦笑するのは、ITジャーナリストの井上トシユキさんだ。
話、というのは、「政治系YouTuber」の法的規制である。韓国で今、フェイクニュースの抑止などを理由に、与党などが大真面目に検討を行っている。
朴槿恵氏も出演...影響力大
日本と同じように、韓国では今、インターネット番組の影響力が増している。特にYouTubeでは、ジャーナリストなどがホストを務める個人番組が人気だ。
その代表格が、韓国経済新聞主筆・鄭奎載氏が主宰する「鄭奎載TV」である。時事問題を論じる硬派番組ながら、チャンネル登録者数は25万、総視聴回数も200万に達する。2017年には、政治スキャンダルが噴出していた朴槿恵大統領(当時)も出演した。国会での弾劾訴追可決後、初となるメディア登場で、大きな話題を呼んだ。
現地では「一人放送局」とも呼ばれるYouTuber、ことにこうした政治系の話題を扱うYouTuberが、「規制」の対象になるのでは――そんな観測が、韓国で広がっている。与党「共に民主党」側が8月、ネット番組もテレビなどと同じく、放送法の規制対象に含めるべき、との素案を示したのだ。これらの番組が「フェイクニュース」の温床になっている――というのがその理由である。
もっとも、異論も多い。根強いのは、文政権が自身に批判的なYouTuberを、この改正で抑え込もうとしているのでは、との見方だ。韓国紙・朝鮮日報によれば、いま人気の政治系YouTuberは「鄭奎載TV」を筆頭に保守系、右寄りの面々が目立つ。自然、革新系の文在寅大統領には批判的だ。こうしたネット上からの攻撃を封じるのが、法改正の真の目的ではないか――こうした反対論が、保守派からは噴出している。政権の思惑通りに行くかは、今のところ不透明だ。