インターン先の社長の言葉で意識変革
小松さんは、「A社に就職できることに、100%満足している」と話す。それでも内定後に参加した別の企業でのインターンでは、「意識変革が起こるくらいの気付きを得られた」と打ち明けた。
小松さんが4年の夏休みを利用して参加したのは、企業の人事コンサルティングなどを手掛けるB社のインターンだった。面接を代行する企業では補佐役として面接に同席し、大学3年生向けの就活セミナーでは15分間の講演を任されるなど、人材コンサル企業ならではの体験ができた。
「意識変革」が起きたのは、インターン生活にも慣れてきたある晩だった。小松さんは少し高級なレストランで食事をしていた。B社の社長が、経験のためにと、取引先との会食に誘ってくれたのだ。遊び目的ではない酒の席は初めてだった。場の雰囲気に気おされたうえに会話の単語が難解で、萎縮していた。
その結果、小松さんはなんとなく相槌を打ち、2人が笑えばただ作り笑いを浮かべていた。2時間ほどの間に、自ら話題を切り出すことはできず、冒頭で自己紹介をした後は、ほぼ一言も発していなかった。
取引先を見送って、社長と並んで歩く帰り道。「まあこんなもんでいいのだろう。うまく合わせられた」と高をくくっていた。その矢先に、社長の口から思いがけない言葉が飛び出した。
「今日は小松君を連れてきた意味がなかったよ」
小松さんは、まったく予想していなかった一言に面食らった。社長はさらに続ける。「私が場を設けた意味を考えてみてほしい。今日は君が積極的に話を聞いて、経験を積むべきだった。難しいことを聞く必要はなく、先方の経歴を質問するだけでも話は広がったはずだ。まして君はインターン生の身なのだから失敗は、何も怖くない。ただのお客さんでいては、得られるものも得られない」
このとき小松さんは、自身の日頃の行動が俯瞰して見えたという。「僕は集団になると他人の目を気にしすぎるところがあるのです。慎重に様子をみて、周りに迷惑をかけていないかと」。協調性があると言えば長所でもあるが、その特性が裏目に出て損をすることもある。実は就活を振り返っても、後悔はあった。数社の選考過程の人事面談で、「話してみたい社員はいるか」と聞かれても、あっさりと断っていた。それが空気を読む行為だと思っていた節もあった。
後日、思い返してみて社長にずばり性格を見抜かれた驚き以上に、きちんと指摘してくれたことに大きな感謝を覚えたという。「社会に出て、例えば周りを巻き込みながら仕事を進める場面では、気を遣わずに我を通すことも必要なのでしょう。社会に出る前に知れてよかったです」