この夏、インターンシップに参加した就活生も多いだろう。もはやインターンへの参加は、就活準備で当たり前のような風潮にある。しかし何のためにインターンへ行くのか。仕事体験、業界研究など、それぞれ理由や目的が違っていいが、ここではインターンを「自己理解を深める場」と置いてみたい。その意味を2人の内定者たちの体験をもとに、具体的に紐解いていく。
順調に決まった内定
9月中旬、待ち合わせた都内の喫茶店に、アシンメトリーの短めな髪に、スーツで身を固めた若い男性が入ってきた。小松純さん(22)は、来年4月から人材関連のベンチャー企業に入社する同志社大学の4年生だ。慎重に言葉を選んだ受け答えは、すでに社会人の風格を感じさせる。取材した日は、ちょうど小松さんが3週間のインターンを終えた日だった。
大学4年の夏休みと言えば、進路を決めた多くの学生が、社会に出る前の「自由な時間」を謳歌する時期だ。にもかかわらず、小松さんは卒業旅行に出かけることもなく、地元の大阪を離れて上京し、インターンに時間を使うと決めた。「春に入社したら、その企業での仕事しか知れなくなります。ですので、学生のうちに別の働き方を体験してみたかったのです」と動機を語る。
小松さんは、就活時にインターンを積極的に活用したわけではない。むしろ「友達と日程が合う日に行ってみるか」程度に考え、3年の夏休みに大阪で5社のワンデーインターンに参加した。結果的に、本人が期待していなかった通りに、特に学びや発見はなかったという。
そうこうしている内に、大学の新学期を迎えた。小松さんは「マニアックな機械分野」を専攻する理系学生だ。そもそも平日は研究で忙しく、就活どころではなかった。大学院への進学も含めて進路を検討していたが、「専門性を活かすよりも、幅広く仕事の可能性を探ろう」と、就活に舵を切ったのは今年の2月だった。
それでも小松さんが「自分で考えた事業を形にしたい」という思いを叶えられそうな企業と出会うのに、そう時間はかからなかった。4月半ば、ある人材関連のベンチャー企業A社から内定を取得。選考が進んでいたIT企業などにはすべて断りをいれた。小松さんは「A社は説明会や選考過程の面接で、説得力が他と違った」と振り返る。加えて「大企業は年功序列だが、A社は平均年齢が若く裁量権もある。がんばれば報酬面でも優遇される」のも魅力だったという。