大相撲の貴乃花親方が引退を決断したことについて、貴乃花親方を長く取材してきたスポーツジャーナリストの二宮清純氏が、複雑な思いを述べた。
「不器用な人が1人くらいいてもいい。それを許容できる相撲界であってほしかった」。二宮氏の言葉は、日本相撲協会への苦言をはらんでいた。
「私も意見しますが、聞いてもらえていないんじゃないか」
二宮氏は2018年9月27日放送の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)に出演。25日に協会へ引退届を提出した貴乃花親方だが、「最終的に決断したのは場所中だと思う」とし、その理由として、9月場所前に食事を共にした際のやり取りを明かした。
「食事の後にメールが返って来て、『場所は虚心坦懐、頑張ります』と書いてあったんです。親方は四字熟語が好きです。一意専心とか。いつもの親方らしいなと思っていた。一兵卒で頑張るとも以前言っていましたし、場所中に決断する何かがあったんだろうと思います」
貴乃花親方を長く取材してきた二宮氏は「性格的には一本気ですよ。もう少し他人の話を聞いた方がいいとか言う人もいます。私もよく意見しますが、たぶん聞いてもらえていないんじゃないですかね」と冗談めかしながら人物像を述べると、
「ただ、今の世の中、長い物に巻かれろ、寄らば大樹の陰という時代で、こういう不器用な人が1人くらいいてもいいじゃないですか。それを許容できる相撲界であってほしかったと思います」
と発言。対立構図となってきた協会に対し、苦言を呈する形となった。
「『ガバナンス強化』といいますが逆行していますよ」
二宮氏は、協会理事会が7月に決定した「全ての親方が5つの一門のいずれかに所属しなければならない」とのルールにも否定的な見解を述べた。貴乃花親方は、一門に入るには告発状の内容が事実無根であると認めることを条件とされた、としており、引退決断にも関わる取り決めとなっている。
協会側は、「ガバナンス強化」「一門ごとに支給する運営補助金の使途透明化」をルール設定の理由としているが、二宮氏は
「『ガバナンス強化』といいますが逆行していますよ。一門の力を強くしよう、一門を整備しようというのは、言ってみれば誰も一門に文句を言えなくなる。そうなれば(理事選挙の)票が読めます。これでは選挙をやる意味がなくなります。『アンチガバナンス』ではないですか? 内閣府から選挙制度変えろと言われますよ」
と批判。さらに、運営補助金の透明化についても、
「おかしいですよね。それぞれの親方は個人経営者ですが、決算報告書を出しています。これを全部精査すれば済む話ですよ」
と代替案を提示して見解を述べている。
こうした点から、
「『一門の強化』ありきで、後付けで理由を考えたように見えてしまう」
と協会に疑問を示していた。