貴乃花「誤解引退」説を唱える識者たち 要請は協会の「総意」ではない?

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   日本相撲協会に引退届を提出した貴乃花親方だが、肝心の引退理由をめぐって協会との間に認識のズレがあることが浮き彫りになっている。

   協会の元外部委員で漫画家のやくみつる氏は、引退の決断に「何か先走ったのでなければよいが」と危惧。NHKで大相撲担当歴が長い刈屋富士雄解説委員は、「『誤解』しているのではないか」と貴乃花親方に直言している。

  • 9月25日に会見した貴乃花親方
    9月25日に会見した貴乃花親方
  • 9月25日に会見した貴乃花親方

「必要条件のようには言わないだろう」

   貴乃花親方は2018年9月25日の会見で、「告発状の内容が事実無根な理由に基づいてなされたものであることを認めないと親方を廃業せざるを得ない」と要請されてきたとした。また、協会理事会で「一門に所属しない親方は部屋を持つことができない旨の決定がなされた」とした上で、自身が一門に入る「条件」として、「告発状の内容を事実無根と認めること」を提示してきたという。

   こうした貴乃花親方の主張に引っかかったのが、かつて力士暴行死事件後の再発防止検討委員会で外部委員をつとめた、やくみつる氏。26日放送の「プライムニュース イブニング」(フジテレビ系)で、「何か先走ってしまったのでなければよいがな...というのが第一印象です」とし、懸念を示した。

「協会側として、『告発状の内容の全否定』と『一門への所属』は、直接リンクした話ではないと思う。必要条件のようには言わないだろう。ただ貴乃花親方にしてみれば、それ(告発状の内容の全否定)があたかも(一門に所属するための)必要条件のように感じられて、態度を硬化させてしまったというところではないか」

   認識のズレは、貴乃花親方の会見直後に行われた協会側の会見で浮き彫りになった。芝田山広報部長は「『一門に所属しない親方は部屋を廃業しなければならない旨の決定がなされた』とありますが、そのような事実は一切ない」と説明。所属先の一門を決める期限とされていた9月27日時点で所属が決まっていない親方がいた場合、

「対応はこの日(27日)の理事会の場で審議する予定でした。方向性としては、もう一度期間をとって一門への所属を招請するというものでした」

と述べている。無所属を認めない理由は、「協会が一門ごとに支給する運営補助金の使途を把握し、公益法人として透明化を図る必要がある」からだとしている。

「相撲協会が総意として決めることは考えられないと思います」

   これらの見解には、協会側が都合よく取り繕っているのではないかと疑いの目も一部で向けられているが、貴乃花親方が言う「告発状は事実無根と認めなければ親方廃業」という要請の出所も定かではない。

   貴乃花親方は会見で、この要請の「正式な通達、書類、文書はない」と明言し、「名前は控えるが、役員のある方から今(9月)場所の後半戦に入り初めてその話を聞いた」とするに留めている。そこで、要請をめぐって「八角理事長らと話し合いの場を持とうとしなかったのか?」と問われると、「正式な通達が理事長からあれば話せたかもしれないが、現在まで直接の通達はない」と返答。協会執行部に直接確認はしてなかったと見られる。

   NHKで大相撲実況を長年続ける刈屋富士雄・解説委員は、会見の中盤で手をあげ、「親方はかなり『誤解』しているのではないかなと思って聞いています」と指摘した。「告発状の内容をすべて事実無根と認めなければ、親方としてやっていけないとか、一門に所属できないなどということを、相撲協会が総意として決めることはまず考えられないと思っています」「一部の理事、一部の役員の考え方ではないかと思います」と推測。さらに

「私は今場所中、いろいろな親方の話を聞き、『貴乃花親方を残したい、応援したい』という親方は半分以上いると思うんです。だから、貴乃花親方を追い出そうという一部の方の言葉で、結論を急がせない方がいいのではないか」

と、冷静になるよう伝えていた。

   貴乃花親方は協会に「引退届」を提出したが、「退職届」でなければならないなどとして受理されていない。協会ぐるみで貴乃花親方を追い出そうとしているのか。やく氏は上記「プライムニュース イブニング」で、「協会も辞表を提出されたことに驚いているのではないか。即、慰留には走らなかったが、受理しなかったのが協会の意識の一端であると見たいです」と、引き留める可能性があることを指摘。そのうえで「真意がどこにあるか、互いの意思を確認する必要がある」と述べた。

   貴乃花親方の代理人弁護士は27日、引退届を退職届として扱うよう求める上申書を協会に提出。協会は届けの扱いを同日の理事会で決めることを見送り、10月1日の臨時理事会で審議する見込み。

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