かつては資金難が壁となったが
FAに関する広島の歴史は、黒い影がつきまとう。1999年に江藤智氏がFA権を行使して巨人に移籍。2002年にはアニキ金本知憲氏が阪神へ。2007年には新井貴浩氏が金本の後を追うように阪神に移籍した。
流出は国内に止まらず、メジャーに移籍する選手も出てきた。2007年には5年連続で開幕投手を務めたエース黒田博樹氏がMLBドジャースに電撃移籍。2016年にはポスティングシステムを利用して前田健太がドジャースに入団した。
過去、広島が主力選手の流出を防げなかった要因のひとつは資金難にあった。今でこそ多くのファンが球場に詰めかけ、カープ女子なる現象が起こるほどの人気球団に成長したが、当時の球団経営は厳しく、選手の年俸は他球団に比べて低いものだった。金本氏がFA権を取得し広島と再契約を結ぼうとした際、100万円の再契約金を要求したが、球団が受け付けなかったため、悩みぬいた末FA権を行使したといわれている。
2009年にマツダスタジアムが誕生して以来、チームの人気は地元広島に止まらず全国区となり、球団の経営も安定してきている。FAで主力選手が流出した当時と現在では、球団の財政状況は大きく異なるが、FAの暗い歴史が繰り返されれば栄光はそう長くは続かないだろう。