市場原理を使った脱原発の流れを支持しているが...
今回の広島高裁の決定は、このような意味で、阿蘇の破局噴火を社会通念で考えることはないとしており、極めて常識的である。また、原子力規制委員会の「火山影響評価ガイド」について、今回の高裁決定は、不合理と断じている。規制委は、火山リスクを見直すべきだ。
各地において、原発訴訟は多いが、今回の決定で、それらが、原発活動家に利用されていることも明らかになった。
差し止め側の人は、今回の決定は許しがたいと憤る。しかし、最高裁への上告はしないという。その理由は、最高裁で決定が出て他の裁判に影響を与えるからだという。もし本当に許しがたいなら、抗告すべきであるが、それをしないのは、他の裁判で争いたいからというのは、自分たちの活動を優先したいと吐露しているようなものだ。
これは、差し止め仮処分申請がお手軽な訴訟手段だからだろう。仮処分の性格から、限定的な証拠で判断せざるを得ないから、やむを得ない側面もあるが、高度な科学的な知見を要する原発では、昨年の広島高裁での差止命令のように、素人目から見ても、非科学的な判断がなされているのは問題であろう。
筆者は、市場原理を使った脱原発の流れを支持しているが、差し止め仮処分のような、原理主義者の反原発論者の性急な運動はさっぱり理解できない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「マスコミと官僚の小ウソが日本を滅ぼす」(産経新聞出版)など。