富士フイルムホールディングス(HD)の株価が2018年9月中旬、3日連続で年初来高値を更新した。インスタントカメラ「チェキ」の販売が世界で好調なことを受けて見直し買いが入っている。米ゼロックスの買収計画が膠着状態にあるのは懸念材料だが、ものづくり企業としての実力が再評価されている。
今回の株価急伸のきっかけは、JPモルガン証券が9月13日付のレポートで投資判断を3段階で真ん中の「ニュートラル」から最上位の「オーバーウエート」に、目標株価を4500円から6000円にそれぞれ引き上げたことだった。理由はチェキが伸びていることに加えて、電子材料の売り上げ増やコピー機関連事業のリストラ効果により、中長期的な成長が見込まれること。特にチェキはこの製品群だけでスマホにおされる世界のデジタルコンパクトカメラ市場を抜き去る可能性が出ていることを評価した。
世界販売の目標台数を上方修正
これを受けて富士フイルムHD株は14日の東京株式市場で一時、前日終値比4.7%(220円)高の4942円をつけ、8月10日以来約1か月ぶりに年初来高値を更新。翌営業日の連休明け18日と19日も5079円、5166円と上値を追って年初来高値を更新する展開となった。
チェキは撮影したその場で写真をプリントして楽しめるという製品群。そうした機能はかつて「ポラロイドカメラ」などにあったものだが、写真のデジタル化の大波の中で衰退し、今となってはほとんど富士フイルム(富士フイルムHDの事業子会社)の独壇場と言える。富士フイルムという会社は21世紀初頭の銀塩写真システムの需要蒸発に直面した際、古森重隆・現会長の指揮のもと、医療機器や医薬品、再生医療事業、化粧品、健康食品、ディスプレイ材料、電子材料、記録メディア事業といった分野を強化することで業績のV字回復を果たした。一方でチェキのような形で独自技術を駆使してフイルム写真の延命をはかり、それがデジタル全盛の今日、ヒット商品に成長しているところに底力を感じさせる。
2018年5月に発売した「インタックス スクエア SQ6」(想定価格1万7000円前後)はインスタグラムを意識した正方形のプリントサイズが特徴で、計画を上回る売れ行きという。これに加えて10月に新製品を投入することなどにより富士フイルムは、2017年度実績で770万台だったチェキシリーズの世界販売の18年度目標を900万台から1000万台に上方修正した。日本のみならず、欧米や中国、韓国などでも人気となっていることが強みだ。