国土交通省が2018年9月18日発表した7月1日時点の基準地価は、全国平均(全用途)の変動率が前年比プラス0.1%となり、1991年以来27年ぶりに上昇に転じた。商業地は同1.1%と3年連続で上昇。住宅地はマイナス0.3%だが、10年から9年連続でマイナス幅が縮小し、回復基調が明確になった。
アベノミクスによる金融緩和や景気回復を受け、地価は近年、二十数年ぶりなどという歴史的な回復基調が続いている。国交省が2018年3月27日に公表した公示地価(1月1日時点)は、地方圏の商業地が前年比0.5%上昇し、1992年以来26年ぶりにプラスに転じた。国税庁が7月2日発表した2018年(1月1日時点)の路線価は、全国の平均変動率が前年比0.7%のプラスとなり、16年に8年ぶりにプラスに転じて以降3年連続で上昇した。
住宅地もプラスに転じる可能性
今回の基準地価は、商業地と住宅地などを合わせた全用途の全国平均がバブル末期以来、27年ぶりにプラスに転じたというのがニュースで、これまでの地価の回復基調を裏付けた格好だ。しかし、全国平均の住宅地は今回もマイナスに沈んだままだ。日本の地価は1991年のバブル崩壊が分岐点となった。基準地価の場合、住宅地、商業地、全用途平均とも91年までは連続してプラスだったが、92年から一転、いずれもマイナスとなった。
回復が早かった商業地は2016年にプラス0.005%となり、9年ぶりに上昇。その後は3年連続で上昇し、全用途平均を押し上げた。0.3%のマイナスが残る住宅地だが、これまでのペースで回復が続けば、2019年はプラスに転じる可能性がある。そうなれば、住宅地は1991年以来、28年ぶりに上昇することになり、商業地、全用途平均と合わせ、三つの主要指標がいずれもマイナスを脱することになる。19年こそ、バブル崩壊後の「失われた二十数年」を取り戻す「節目の年」となる可能性が高い。
東京・銀座の地価の過熱感を指摘する声も
今回の基準地価について、不動産協会の菰田正信理事長(三井不動産社長)は「全国平均で27年ぶりに下落から上昇に転じ、地方圏では下落幅が引き続き縮小した。デフレ脱却への道筋を確実に進む中、経済の好循環が着実に回りつつあることが地価に反映された」などとコメント。アベノミクスが地価に与えた影響を評価した。
今回の地価の回復は、景気回復や株価上昇、低金利の継続による資金調達環境の良さ、訪日外国人旅行者の増加などが背景にある。気になるのは金融緩和によるバブルの再来だ。全国最高地点となった東京中央区銀座2の「明治屋銀座ビル」は1平方メートル当たり4190万円とバブル期のピークを2年連続で更新した。国交省は「かつてのバブルは地価上昇を見込んだ転売が目的だったが、その動きは見られない。地価は実需に基づき上昇している」と話すが、市場では銀座の地価の過熱感を指摘する声もある。