V逸で待望論高まるも 掛布雅之が阪神監督になれない理由

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   13年連続でリーグ優勝の可能性が消滅した阪神に掛布雅之監督待望論が再燃している。2018年9月20日、阪神はヤクルトに4-9で敗れ、今季のリーグ優勝が完全消滅した。自力2位の可能性も消滅し、借金は今季ワーストを更新する「11」。再び最下位に転落したチームの指揮官に対して試合後、レフトスタンドから「金本、やめろ」の罵声が飛ぶなど、虎党の我慢は限界に達している。

   今季、対ヤクルト7連敗。残り19試合を全勝しても首位・広島の勝率を上回る可能性がなくなった。救いは3位巨人とのゲーム差1.5が変わらず、CSシリーズ進出へ望みがつながったこと。20日からは首位・広島との3連戦(マツダ)を控える。優勝へのマジックナンバー4の広島の最短Vは22日。低迷の続く現状では、2年連続で目の前で胴上げを見るという屈辱は避けれそうにない。

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投打にわたる大きな誤算

   監督就任後、今年で3年目となる金本監督。就任1年目は4位と振るわなかったが、2年目は2位と、確実に順位を上げ、今年こそはと臨んだシーズンだった。シーズン前、金本監督が「これまでで一番強いチーム」と言い切るほどだったが、いざふたを開けてみれば、年俸3億4000万円で獲得した元メジャーリーガーのウリィン・ロサリオが機能せず、打率2割4分2厘、8本塁打で8月27日に2度目の登録抹消。投手陣はここまで踏ん張りを見せて貧打をカバーしてきたが、3年ぶりの2ケタ勝利を期待された藤浪は3勝止まりと、投打に誤算があった。

   2016年に2年契約で監督に就任した金本監督は、2018年には3年契約で続投が決まった。今シーズンは3年契約の1年目となるが、最下位争いを演じるチームの指揮官に対して周囲からは「解任」、「辞任」といった厳しい声が聞こえてくる。現時点で阪神のフロントは、金本監督に正式に来季の続投要請をしていない。CS進出の可能性を残す今、進退に関してはシーズン終了後となるだろうが、ファンの間では「ミスタータイガース」掛布雅之氏の監督待望論が再燃している。

   これまで幾度となく叫ばれてきた掛布監督待望論。だが、これまで掛布氏が1軍でチームを指揮した場面は巡ってこなかった。なぜ「ミスタータイガース」は1軍の監督になれずにここまでに至るのか。話は31年前に遡る。

当時のオーナー激怒させた「事件」

   1987年3月、シーズンを直前に控え、掛布氏は飲酒運転で逮捕された。阪神の人気選手の現行犯逮捕に衝撃が走り、当時の久万俊二郎オーナーの怒りはすさまじく、「うちの4番は欠陥商品。野球選手以前に人間として失格だ」とこき下ろした。さらに「私の目の黒いうちは、彼を絶対にウチの監督にはしない」と周囲にもらしたという。

   久万オーナーは頑ななまでに掛布氏を許すことはなく、実際、久万氏がオーナーを務めている間に掛布氏が阪神のユニホームに袖を通すことはなかった。その間、掛布氏に他球団から監督のオファーがあったというが、阪神ファンに育ててもらった選手として、「まずは阪神ファンに恩返しをしたい」との理由で固辞し続けた。

   「ミスタータイガース」が阪神の指導者としてグランドに立ったのは、久万オーナーの死去から2年後の2013年だった。新設のゼネラルマネジャー付育成&打撃コーディネーターに就任し、同年の秋季キャンプから指導を始めた。その2年後の2015年には、金本監督の強い要望で2軍監督に就任。3年間にわたって若手の育成に努めた。

   2軍監督時代は、自身の野球理論を無理に押し付けることなく、徹底して選手と話し合うことで若手の可能性を伸ばしてきた。掛布氏のマンツーマン指導を受け、「掛布チルドレン」と呼ばれた伊藤隼太、中谷将大、原口文仁、高山俊らは、それぞれ1軍に定着し、着実に結果を残している。掛布氏の指導力は高く評価されていたが、2017年のシーズンを最後に監督から退いた。2018年シーズンからは「オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザー」としてフロント入りしている。

   2軍監督として実績を残した掛布氏はなぜ、1軍の要職に就くことが出来なかったのか。大いに疑問が残る点であるが、一部で金本監督との確執の噂もある。2軍監督就任は、掛布氏の「野球観」に共感した金本監督の強い要望があって実現した。だが、時間の経過とともに徐々に2人の間で「野球観」のズレが生じはじめたといい、ついに掛布氏の「1軍昇格」は実現しなかった。

   プロ野球に通じる関係者によると、阪神のフロントは長期的に金本監督を育てていく方針で、現時点でもその方向性は変わらす続投の可能性が高いという。一方で全国区の人気を誇る掛布氏は、球団としては魅力的で、次期監督候補の一人であることには変わりはない。シーズン終了後の阪神フロントの決断が注目される。

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