大手ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長が米ゴルフ界に進出することが判明した。スタートトゥデイが大会冠スポンサーとなり、米男子プロゴルフツアーを日本で開催することが内定したと、2018年9月19日付けのスポーツ報知が報じた。スポーツ報知によると、2019年10月に千葉県内での開催に向けて調整中だという。
民間人として世界初の月周回旅行を1000億円超で契約し、世間をあっと言わせた前澤氏の次なる野望は米ゴルフ界への進出だった。ゴルフが趣味で、「ZOZOTOWN」でもゴルフウェアを販売している。その趣味をもビジネスに展開してしまうのが、前澤氏のセンスなのだろう。前澤氏のサプライズは日本ゴルフ界に何をもたらすのだろうか。
大富豪にとっては高くはない買い物
米ツアーを日本で開催するにあたって一番のネックとなっていたのが多額の大会運営費。1試合で10億円を超えるとされる費用を一企業が捻出することは難しく、スポンサードしてくれる企業はなかなか見つからなかった。そんな中、名乗りを上げたのが前澤氏だ。2012年に東証1部に上場したスタートトゥデイの時価総額は1兆4569億3700万円とされ、資産2830億円ともいわれる大富豪にとっては決して高くはない「買い物」だろう。
米ツアー日本開催はまだ内定段階だが、これに対するゴルフ関係者の期待は大きい。実現すれば、タイガー・ウッズ(米国)をはじめとする世界最高峰のプレイヤーのプレーを直接見る機会に恵まれる。女子ゴルフに比べ人気で劣る男子ゴルフだけに、人気復活の起爆剤としたいところ。一方で、2020年東京五輪でメダルを狙っている海外選手にとっても日本でのプレーは意義がある。
ゴルフ界に電撃参戦を果たした前澤氏のもうひとつの野望が、プロ野球の球団を持つことだ。7月17日には自身のTwitter上で、「プロ野球球団を持ちたいです」とコメント。既存の球団を買収するのか、新たな組織編制を提案し、自身のチームを作って参入する意向なのかは不明だが、「シーズン後に球界へ提案するプランを作ります」との計画を明かしている。
千葉出身の前澤氏は、2016年12月に地元のマリンスタジアムの命名権を獲得し「ZOZOマリンスタジアム」と名称を変更。球団を買収するならば千葉ロッテが有力と見られているが、球団を買収するにせよ、チームを作って参入するにせよ、日本球界に参入するのはそう簡単ではない。
NPB参加の前に立ちはだかる企業の「品格」
プロ野球球団の参加資格に関しては、野球規約に細かく記載されている。この規約すべてをクリアし、参加したい年の前年11月30日までにオーナー会議の承認を得なければならない。金銭面でいえば、球団買収にかかる費用とは別に、NPBに納める預かり保証金25億円、野球振興協力金4億円、加入手数料1億円の計30億円が必要となる。2012年に横浜ベイスターズを買収したDeNAの球団取得総額は約95億円だったとされる。
前澤氏にとって資金面ではまったく問題はないが、大きな「障害」となるのが各球団のオーナーらの存在だろう。新たに参加する企業に求められるのは企業の「品格」で、参加するにふさわしいかどうかはオーナー会議で判断される。「品格」の定義は実に曖昧で、各オーナーの個人的見解に委ねられている。近年、楽天やDeNAなどのベンチャー企業がNPBに参加しているが、日本有数の優良企業を親会社に持つ球団のオーナーらの古い体質はいまだ改善されず、それは排他的であるといわれている。
世界を飛び越え、宇宙を視野に入れている前澤氏だけに、NPBの参加がならなかった場合、MLB進出の可能性は十分にある。MLB参加に関しては、日本のような規約はなく、ビジネスライクなもの。また、上記の米ツアー参戦が正式決定すれば、米国におけるスタートトゥデイの知名度は飛躍的に上がり、さらに米ツアーに加え、MBLの球団を持てば、全米にビジネスチャンスが広がる。
ちなみに2017年9月に元ヤンキースのデレク・ジーター氏、実業家のブルース・シャーマン氏が中心のグループがマーリンズ球団を買収した際の金額は、米メディアによると12億ドル(約1356億円)。過去最高額は、2014年に元NBAのスター選手、マジック・ジョンソン氏らのグループが、ドジャースを買収した際の20億ドル(約1660億円)とされる。宇宙的スケールを持ち合わせる前澤氏のMLB進出は決して夢物語ではない。