2018年9月2日発行の中国誌『財経』に、「際立つEV(電気自動車)の信用危機」と題する文章が発表された。文章の冒頭から「2016年には中国の新エネルギー車産業は急ピッチの成長を遂げ始めたが、2018年に至っては、その事情に変化が起きつつある」と述べられている。
これは、消費者のEVの安全性に対する信頼と、動力電池企業の利潤獲得能力への信頼がいずれも減少していることを示している。
電池に混入する異物
中国では2018年の7~8月だけでも、多くのEVの自然発火事故がネットで話題になった。
7月初め、南京金竜で生産された純電気配達用自動車が北京の充電スタンドで自然発火。数日後、深?の充電スタンドでも純電気配達用自動車の発火事件が発生。
7月末には、電気自動車が成都の威馬研究院園区内で発火。数日後、力帆650EVの路上発火事故が発生。さらに数日後、安凱客車が生産した純電気バスが銅陵市のトンネル内で自然発火、といった具合だ。
ほとんどの事故が「EV電池の問題だ」と指摘されている。
『財経』の取材に対し、あるベテランの動力電池技術者は、次のように指摘している。
「電池の自然発火が起きるとしたら、最も可能性がある問題は、バッテリーのセル内部素材の純度が足りず、異物が多すぎることに原因がある」
製造・生産過程で異物がセルの内部に混入すると、充電の途中で異物が隔離幕を突き破り、それにより電池の局部ショートが起こり、自然発火する。
これ以外にも現在の中国政府の政策による誘導のもと、各社が盲目的に高密度の電池を生産していることも、発火事件の多発と関係している。エネルギー密度が高い電池ほど異物に対する許容度は小さくなるからだ。
EVメーカーの技術不足も問題
もちろん、電池の自然発火の責任をすべて電池生産業者に負わせることはできない。現在、多くのEVメーカーは電池モジュールや電池のセルを外部調達し、それらの組み立てを自ら行っているが、システムを組み立てる技術基準に到達しておらず、問題が起きやすくなっているとされる。
上述の電池技術者によれば、彼ら自身の電池もかつて事故が発生したが、工場に戻して検査したところ発見された問題は、メーカーの組み立て時に規範化する手順がなく、生産の際にネジを堅く締めなかったため、充電の途中に電池が膨張し、ネジが緩んだことが原因であったという。
各自動車メーカーが電池組み立て業務に食い込もうとしているが、厳格な技術手順がないままでは、今後も高い事故発生率が続くことになるだろう。
また、ある上場電池企業の幹部によれば、某自動車メーカーに視察に訪れた際、そこにEVに水冷却システムがないことを発見し、今後も水冷却システムの導入も考慮していないと知って、そのEVメーカーからの買い付けを拒絶したという。コストを減らすため、もっとも大事な水冷却システムもつけないようなEVは、電池が高温でショートする可能性がより高くなる。水冷却はぜったいに省略してはいけないシステムなのだ。
中国国家工業・情報化部装備工業司の瞿国春副司長は9月1日に開かれたあるEV業界の会議で次のように語った。
「安全はわれわれ新エネルギー自動車発展において必ず保持するべきボトムラインであり、われわれ全業界のあらゆる参与者がこれについて真剣に対応することを望んでいる」
『財経』誌に掲載された文章は、次のような心配を述べている。
「新エネルギー自動車の核心的部品のひとつとして、動力電池企業は自身の実力を強化しなければ、資本の信頼を失う恐れがあり、これは業界の未来に暗い影を投げかけるものとなるだろう」
(在北京ジャーナリスト 陳言)