日本スポーツ界でパワハラ問題が吹き荒れる中、顧客による「暴言」や「セクハラ」、「土下座の強要」などの迷惑行為を「クレーマー・ハラスメント」と呼んで啓発が必要との議論(厚労省の検討会)もある「悪質クレーム」の実態の一端が、産業別労働組合「UAゼンセン」の調査で明らかになった。
外食やタクシー、病院などで客や患者から「悪質クレーム」を受けた労働者は、回答者の約4分の3に及び、うち9割超がストレスを感じていた。調査結果が発表されると、ネット上でも「悪質クレーマー」を見かけたという人から、対策の必要性を訴える声などが寄せられた。
被害経験者の9割超が「ストレス感じた」
「UAゼンセン」は2018年9月11日、ホテルや介護など「総合サービス部門」の組合員約3万人から回答を得た、「悪質クレーム(迷惑行為)」に関するアンケート結果(速報版)を発表した。
悪質クレームを受けた経験がある人は、約74%に上った。また、約39%は、悪質クレームが「近年増えている」と感じていた。「あまり変わらない」は約33%だった。
具体的な迷惑行為では、最多(複数回答可)は「暴言」で約25%で、以下は「威嚇・脅迫」(約21%)、「何回も同じ内容のクレームを繰り返す」(約15%)と続く。「セクハラ行為」(約6%)や「暴力行為」(約4%)も見受けられ、「土下座の強要」も約2%いた。
こうした被害経験がある人のうち、「強いストレス」を感じた人は約56%と半数を超え、「弱い~」を含めると90%強の人がストレスを感じていた。「精神疾患になったことがある」と回答した人も1%強いた。
実際の場面で「どう対応したのか」については、「謝り続けた」が最多で約36%。「何もできなかった」人も約5%おり、4割超の人が受け身の対応に追われていた。「毅然と対応した」は約24%だった。
「『クレーマー・ハラスメント』など特定の名前を浸透させることが有効ではないか」
調査結果について産経新聞(12日、ウェブ版)などが報じると、ツイッターなどには、
「でかい声で恫喝してくる中年男性ってなんなんだ、と思う。老人も」
「悪質クレームよく目撃する。(略)長い時間拘束して、しつこく怒鳴りつける」
と、被害を受けたり、目撃したりした人達からの報告が寄せられた。中には、
「対応している現場で働く従業員の大変さを経営陣が理解して毅然とした対応を取れるようにするのが、一番有効」
と、対策の必要性を訴える声もあった。
今回の結果報告の中で「UAゼンセン」は、「私たちはクレームすべてを問題視しているわけでは決してありません」「企業として真摯に受け止め、自社の課題を洗い出し、今後の発展に資するようなものも数多くあります」と指摘したうえで、
「一般常識を超えた、行き過ぎたクレームを何とか抑止・撲滅したいと考えている」
と訴えている。調査は2~5月、同労組の「総合サービス部門」所属組合員を対象に行い、3万396人から回答を得た。
同労組は、「流通部門」を対象に17年に同種調査を行っており(悪質クレームの被害経験者は約74%で、今回とほぼ同数)、結果をうけて18年8月10日には、松浦昭彦会長らが、悪質クレームの撲滅に向けた施策を求める約176万5000筆の署名を加藤勝信・厚労相に手渡した。
この「顧客からの悪質クレーム」については、厚労省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」でも議論の対象になった。18年3月の報告書によると、
「顧客や取引先からの著しい迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性があるものとして整理することが考えられる(しかし、「対応」で異なる点も)」
という指摘や、
「自業主に対応を求めるのみならず、社会全体で機運を醸成していくことが必要である」
「例えば『カスタマー・ハラスメント』や『クレーマー・ハラスメント』など特定の名前やその内容を浸透させることが有効ではないか」
といった意見も出たことが記載されている。