学校法人慶應義塾の最高意思決定機関にあたる「評議員会」の選挙が佳境を迎えている。この評議員の一部は、全国に約30万人いる「塾員」と呼ばれる卒業生による選挙で選ばれ、大企業の社長・会長やその経験者が数多く立候補。社内に「選対」を設け、慶大以外の卒業生が集票活動をさせられることも多い。
評議員選挙は4年に1度行われる。前回2014年は、原発事故時に東京電力の社長を務めていた清水正孝氏(1968年経済学部卒)の立候補が注目を集めたが、今回のダントツの注目候補は、シェアハウス関連の融資をめぐる問題でスルガ銀行の会長を辞任したばかりの岡野光喜氏(1967年経済学部卒)だ。原発事故が完全に収束しない中での清水氏の立候補には批判が相次ぎ、候補者になった56人のうち、唯一評議員として選ばれなかった。岡野氏は10年、14年と連続で評議員に選ばれているが、今回はどうなるのか。
定員30人なのに55人が選ばれる「カラクリ」
評議員は総勢約100人で、「推薦評議員」「塾員評議員」「卒業生評議員」「教職員評議員」の4つの種類がある。このうち塾員による直接選挙の対象になるのが「卒業生評議員」30人だ。14年の前回総選挙では、「卒業生評議員」として56人が立候補。100名以上150名以下の塾員による署名を集めれば立候補できるが、この時は全候補が理事会の推薦による立候補で、その中に「東京電力(株)元社長」という肩書で清水氏の名前もあった。事故直後の一時期雲隠れをしていた清水氏が財界復帰を狙っている、といった指摘も相次いだ。
14年10月31日、評議員に選ばれた101人が発表された。ただ、選管が発表するのは氏名だけで、どの区分で選ばれたのかは明らかにされない。とりわけ不可解なのが101人の中に、「卒業生評議員」として立候補した56人のうち清水氏以外の55人が含まれていたことだ。
この背景にあるのが、前出の評議員の4つの区分だ。30人が「卒業生評議員」として当選し、落選した候補者は「塾員評議員」として救済されたとみられる。この「塾員評議員」は、「卒業生評議員」と、前期の評議員会が選ぶ「推薦評議員」が選ぶ。逆に清水氏は、立候補を辞退したか、「卒業生評議員」として落選した上に「塾員評議員」としても救済されなかったことになる。